10区新の創価大・嶋津は小説家志望 陸上モノ執筆

  • 総合9位でゴールする創価大10区嶋津(撮影・鈴木みどり)

<第96回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ)

個性あふれるランナーが箱根路を沸かせた。創価大10区の嶋津雄大は13年ぶりの区間新でチームに初のシード権をもたらした。目の障がいと闘いながら将来は小説家も志す2年生は、11位でタスキを受けると1時間8分40秒の快走で2つ順位を上げてゴールに飛び込んだ。

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ゴールテープが涙でにじんだ。最終10区の23キロを1時間8分40秒で駆け抜けた。真っ白なキャップとシューズを身につけた嶋津が、大歓声に包まれて仲間たちの輪に加わった。「やった! 自分に勝つことができた! もう、うれしくて!」。07年に松瀬元太(順大)が残した記録を19秒上回る区間新。3年ぶり3回目出場のチームに初のシード権をもたらした。

11位でタスキを受けたとき、10位の中央学院大とは55秒の差があった。「何とかシードを」の思いが、1キロ3分のペースに表れた。途中でギアを上げすぎて左太もも裏に痛みが走ったが、両手でパチン、パチンと刺激しながら心配する榎木監督には笑顔でOKサイン。東洋大まで抜き去って9位に浮上した。

先天性の網膜色素変性症で、暗いところでは目が見えにくくなる。強い紫外線も視力を妨げるため、レースでキャップは手放せない。練習でもできるだけ明るい場所を選んで走る。校舎内の短い廊下を何百往復することもあったという。失明の可能性もある病気と向き合いながら競技を続けている。嶋津をアンカーに指名した榎木監督は「彼には単独走にも耐えられる強さがある。ただ、これほど走ってくれるとは…」と驚きを隠さなかった。

将来は実業団入りを希望するが、デッカイ夢もある。小説家だ。すでに男子高校生の陸上選手を主人公にした単行本250ページ相当の大作も書き上げている。「春に電撃小説大賞に応募します。大賞なら作家デビューできるんですよ。物語の主人公はどんなに苦しくても必ず勝つじゃないですか!」。

沿道の箱根ファンの熱い声援にも背中を押された。初めての箱根でのサプライズラン。嶋津は強気に攻め抜くレースプランで、間違いなく主人公の1人になった。【小堀泰男】

◆嶋津雄大(しまづ・ゆうだい)2000年(平12)3月28日、東京都町田市生まれ。中学入学後に陸上長距離を始め、都立若葉総合高時代に都駅伝1区で2年連続区間賞。青梅マラソン優勝。自己ベストは5000メートル14分3秒65、1万メートル29分15秒71。趣味は音楽、アニメ鑑賞。文学部の人間学科2年生。170センチ、55・5キロ。