実業団男子の駅伝日本一を決めるニューイヤー駅伝が15年1月1日、群馬県庁前を発着する7区間100キロで行われる。ニッカンスポーツ・コムではかつて実業団のNEC陸上競技部に所属した俳優の和田正人(35)にインタビューを実施した。和田は同陸上競技部が03年に廃部したことに伴い俳優に転向。昨年放送されたNHKの連続テレビ小説「ごちそうさん」のげんちゃんこと泉源太や、今春放送されたTBS系「ルーズヴェルト・ゲーム」で北大路犬彦を演じるなど注目の俳優だ。後編は駅伝の魅力や陸上への熱い思いを聞いた。
--お正月にはニューイヤー駅伝や箱根駅伝をご覧になりますか
もちろん見てますよ。選手をやめた頃には群馬まで足を運んでニューイヤー駅伝も観戦してました。箱根駅伝は今でも現地まで足を運んでいます。時間がないときは大手町のスタートだけ見て、時間があるときには箱根まで行くこともあります。何となく箱根駅伝の雰囲気に触れたいと思って。今でも僕にとっては箱根駅伝が年末なんです。箱根駅伝を見ることで1年を締めくくって、そこから新しい年になるという感覚ですね。
--どういった目線で駅伝を見るんですか
引退した当初は選手目線で見てたんですが、20歳代後半になって陸上をやったことのない人の目線がわかるようになりました。今でも毎年、箱根駅伝で繰り上げスタートとか、途中棄権をする学校がありますよね。テレビでは感動的に伝えますよね。でも引退した当初は「はあ? ただの調整不足、能力不足だろ。不甲斐ないだけじゃん。情けない」と厳しい目で見てました。それが20歳代後半になった頃から、フラフラの選手を見ながら号泣してますよ(笑い)。一般人の目線で見ることも大切だと思って、箱根駅伝を知らない人たちと一緒に観戦したりしてます。僕が「今、選手同士が駆け引きをしてる」とか、「この選手は前の大会で失敗してるんだよ」とか、「同じ高校出身の選手が今、対決してる」とか解説しながら一緒に見ると陸上を知らない人も興味を持ってくれるんですよね。
--和田さん流の駅伝を見る時のポイントは
(じっくり考えて)引退してから時間が空いたので選手個々の能力は知りません。でも中継の情報を聞いているといろいろとわかることがあります。今現在選手が走っている区間のことだけじゃなく、次以降の区間を走る選手の能力まで考えると「この区間でトップに立つだけじゃなくて、もっと引き離しておかないと危ないぞ」なんて考えることが出来るんです。駅伝は総合力ですからね。レース展開を予想するのって日本人向きな競技だと思うんです。だからお正月にこたつに入って、ガイドブックでも見ながらじっくり観戦すると面白いと思ういます。テレビ中継を見ていても、アナウンサーや解説の人は面白い情報をたくさん持っていますから、目だけではなく耳も使ってテレビ観戦するといいと思います。増田明美さんなんてホントにすごいですよ。
--和田さんと同じ世代の人で、今でも実業団で走っている人は誰ですか
もうかなり引退しましたが、ホンダの石川末広(35=東洋大出)は僕と同じ年齢ですがまだ頑張ってますね。トヨタ紡織の白柳(智也=33)は日大の2コ下の後輩です。選手ではないですが日大2つ上の先輩の山本佑樹さん(37)が旭化成のコーチです。30歳を過ぎて走っている石川や白柳には「頑張れ」なんて言えないですね。もう十分に頑張ってきてますから。タイムうんぬんよりも、ここまで陸上を続けてきたという姿をチームの後輩たちに背中で示してるんです。言わば“レジェンド”ですからね。
--陸上をやってきたことが、今の仕事に生かせる部分はどこですか
アスリートとして生きてきたことも、俳優をやっているというのも一緒です。僕は今、第二の人生を歩んでいる感覚なんです。人生は選択の連続ですよね。若い時は目先のモノに流されて安易な選択をしたかもしれません。でもその経験があってこそ、今は以前よりは少し正しい選択が出来ると思うんです。アスリートの頃に経験した失敗や成功を生かしてね。さっきも言いましたが、同じ環境のヤツには負けないという思いは、俳優になっても変わりません。(和田が所属する)D-BOYSのヤツには負けないという気持ちでやってます。
--今でもランニングは続けているんですか
はい。毎朝1時間、12キロぐらい走ってます。今でも走っている時は苦しいです。でも走り終わるとすごく充実し、その後の1日も充実する。走った後のご飯はおいしいし、1日を活発に過ごせて、お酒もおいしくて、いつもよりいい1日を過ごせる。走ることは、よりよい人生を送っていくための“必須科目”のようなものです。走らなくても困らないですが、眠くても起きて走ります。機会があれば楽しんで大会にも出てみたいですね。