20キロ競歩・鈴木雄介の強さの秘密を動画で分析
競歩 鈴木雄介
強さの秘密はコレだ!
- 振り出し足が低く地面に吸い付くような歩きが鈴木の特長だ
- 素早い腕の振りでピッチを刻む鈴木の歩き
鈴木選手は振り出す足が低くて地面に吸い付くような動きをします。ここが他の選手とは明らかに違います。足の後ろへの送りも速いので、ピッチが速くなります。動画を見ながら鈴木選手に合わせて腕振りだけでもしてほしいのですが、相当キツイと思いますよ。
歩く時のブレが少ないのも鈴木選手の特長です。ヒジはよく動いていますが肩はほとんど動かない。ブレていると審判の目につきやすいので反則を取られる可能性が高くなります。鈴木選手は体幹が強いのでこういった歩きが出来るのだと思います。
また一般的にはレースの後半になると後ろ足のかかとの高さが高くなって、体が浮いてくるのですが、鈴木選手のかかとの高さはレース前半と後半で変わりません。かかとの高さはジャッジとは関係ないのですが、その高さが目立つようになると審判は歩き方に違反があるのではないかと厳しい目で見るようになります。鈴木選手の歩き方を後ろから見ると靴底が全部見えません。つまり低い位置で地面に吸い付くように歩いていると言うことです。そういった意味でも鈴木選手が失格の少ない選手であることがわかります。
競歩はココを見れば面白い!/観戦ポイント
●歩いているのに速い
「歩く」という競技なのですが、一般人が走っても追いつけないようなスピードで歩くのが競歩です。目の前で見ても驚くと思いますが、テレビで見てもそのスピードはわかると思います。鈴木選手の世界記録1時間16分36秒(20キロ)は、1キロ平均で3分50秒を上回るスピードで歩き続けて記録されたものです。その速さをぜひ見ていただきたいですね。
●ジャッジがある競技なので最後まで勝負の行方がわからない
マラソンなどの他の種目と一番違うのはジャッジがあることです。「歩く」競技である以上、常にどちらかの足が地面に接していなければいけません。これに違反すると「ロス・オブ・コンタクト」という反則となります。
また競歩の歩き方の特徴でもあるのですが、前脚は接地の瞬間から地面と垂直になるまではひざを曲げてはいけないというルールがあります。これに違反すると「ベント・ニー」の反則となります。選手は隣を歩いている選手がいくつ反則をもらっているかを警告掲示板で確認し、駆け引きしながらゴールを目指します。警告が3枚たまると失格となるため、自分の競り合っている選手が2枚の警告を持っていると相手が無理できないので、スピードを上げて引き離しにかかることもあります。
ジャッジは人の目で行われます。ひょっとするとビデオで見たら両足が空中に浮いているかもしれませんが、あくまでも人の目での判断です。「怪しきは罰せず」が競歩のルールなので、世界トップレベルの選手になると反則ギリギリのところで勝負しています。選手も自分自身の歩きが反則に相当することをわかっていて競技していることもあります。
私が03年に世界選手権に出場した時は8位入賞が目標で、それより下は意味がないと思っていました。なので勝負に出て自分の限界のスピードで歩いたら反則3つで失格になってしまいました。自分の身の丈にあったスピードで歩く、そのスピードを磨いていくのが競歩競技なのです。
●入賞ラインは1時間20分
北京世界陸上での20キロ競歩の入賞ラインは1時間20分ぐらいになると思います。1キロ4分のペースです。鈴木選手は1人で抜け出して4分を切るペースで行くかもしれません。個人差はあるのですが、集団で歩く方が審判の目が届きにくいので、集団で歩くことを好む選手もいます。ただし集団だと選手によってストライドとピッチが違うので、ストレスを抱えながら歩くことになります。鈴木選手は歩型に自信があるので1人で抜け出すことも想定してのレースになるでしょう。
競歩は最後のスパートで大逆転というのが難しい種目です。先行逃げ切りか、あってもロングスパートでの逆転で勝負が決まります。通常の2キロ周回コースで行われる競歩競技ですが、北京世界陸上では1周1キロの周回コースで行われます。残り4周で先頭集団にいれば入賞の可能性はかなり大きいと思います。
鈴木雄介(すずき・ゆうすけ)
1988年(昭63)1月2日、石川県能美市生まれ。石川・辰口中で競歩を始め、小松高から順大をへて、富士通。なめらかで無駄のない歩型を持ち、失格の経験はなし。趣味はカラオケ。171センチ、58キロ。