3度目の世界陸上! 遅咲きスプリンター高瀬慧
短距離 高瀬慧
力試しの遠征 過密日程で勝負勘養う
- 世界選手権に向けての抱負を語る高瀬
世界選手権を前にした7月。高瀬は欧州に遠征し、5日にイタリア、11日にスペイン、14日にスイスでレースを走った。6月に代理人のレイ・フリン氏と新たに契約して、出場レースを調整。過密日程を作り出して、勝負勘を養った。スペインでは100メートルで10秒27とまずまずのタイムををマーク。世界舞台を見据えて、力試しの遠征を終えて帰国した。
高瀬 正直もうちょっとタイムを出したかった。100メートルなら10秒1台。ただそこまで本気で狙っていったわけではないので、それぐらい出たらいいかなという感じ。3日に1レースぐらいのペースで3レースを走った。レース内容は、どんどんよくなっていく感覚が自分の中にあった。
- 14年仁川アジア大会・男子100メートル決勝 10秒15で銅メダルを獲得し、日の丸を広げる高瀬慧
3レース目のスイスでは100メートルで世界歴代2位の9秒69を持つヨハン・ブレーク(ジャマイカ)と同組で走った。3年前の12年ロンドン五輪の200メートル準決勝で一緒に走った相手だ。
高瀬 ブレーク選手が本調子じゃないこともあるが、60メートル地点までは自分がトップで走れていた。スタートから中間疾走にかけてはいい感じになってきた。だんだん良くなっている段階だったので、スピード持久力を養う練習はしていなかった。そのため後半に失速したけれど…。遠征で自分ができてない課題も明確になったし、今はしっかり練習もできていて、自信もある。
リオ五輪200メートルでファイナル進出めざす
「遅咲きスプリンター」と呼ばれる。小学校4年生で陸上を始めた。しかし中学校では目立った成績を残せずに、全国高校総体でも決勝に進出できなかった。
- セイコーゴールデングランプリ陸上川崎 男子100メートル 10秒09でわずかの差で2位の高瀬慧=2015年5月10日、川崎市等々力陸上競技場
高瀬 僕が注目されたのは社会人(11年に富士通入社)になってから、遅咲きといわれるのはそこのところかな。「もしかしたら、日本代表になれるかな」と思ったのも大学4年でしたから。
順大4年の時に関東インカレ400メートルで優勝。日の丸が見えた瞬間だった。今年5月には100メートルで10秒09(日本歴代7位タイ)、200メートルで20秒14(日本歴代3位)をマークした。特に10秒09は向かい風0・1メートルだった。日本人が向かい風で10秒0台を出した初のケース。記録が公認される追い風2・0メートルならば、9秒台も視野に入る好記録だった。
高瀬 大きな目標はリオ五輪で200メートルのファイナル(決勝)に進出することです。人を引きつける走りをしたい。それを見て子どもたちが陸上を始めるきっかけになったり、将来この人を見て陸上を始めました、というふうになっていけたらいい。
19歳の桐生祥秀(東洋大2年)を軸とする若手の活躍で、盛り上がる男子短距離界。高瀬は「彼らには重圧があったと思う。それはしっかり実業団の選手が担っていかないと」と責任感を口にする。その存在は100メートル、200メートル、400メートルリレーと日本短距離チームにとって不可欠だ。26歳が、3度目の世界選手権で実力を発揮する。
高瀬慧(たかせ・けい)
1988年(昭63)11月25日、静岡市生まれ。静岡西高、順大をへて、11年に富士通入社。12年ロンドン五輪は、200メートル準決勝敗退、1600メートルリレー予選敗退。世界選手権は11年1600メートルリレー予選敗退、13年は200メートル1次予選敗退、400メートルリレー6位。100メートルの自己ベストは日本歴代7位の10秒09。179センチ、68キロ。