鎮西が熊本震災乗り越え2冠、今も体育館使えず転々

<全日本高校バレーボール選手権(春高バレー):鎮西3-0洛南>◇男子決勝◇8日◇東京体育館

 男子は鎮西(熊本)が洛南(京都)を3-0のストレートで破り、21大会ぶり3度目の優勝を飾った。16年4月の熊本地震で学校の体育館が全壊し、練習場を失う苦境を克服して昨夏の全国総体との2冠を達成。主将でエースの鍬田憲伸(くわだ・けんしん、3年)が32点をたたき出し、大会MVPに輝いた。

 優勝を決めた鎮西・鍬田は、右手を突き上げながらベンチの畑野監督を目指した。「ありがとうございました」「おう、よくやった」。ガッチリ握手する2人の目が潤んだ。連覇を果たした96年度大会後、6回目の決勝進出で王座に返り咲いた。

 震災を乗り越えた。今も体育館は使えない。県内や隣県の大学、高校を転々とする。水町ら県中学選抜で全国優勝を経験した1年生は、自校で練習したことがない。「練習不足を心配しましたが、今大会は鍬田が大活躍。頼もしかった。バレーはエースの力次第だから」。72歳のベテラン指導者は手塩にかけた教え子の名を勝因に挙げた。

 32得点。右、左、バックアタックと鍬田は打ちまくった。「震災で多くの人々に支えられ、総体では1年生に助けられた。恩返ししたかった」。190センチのエースは高校2冠、大会MVPを引っさげて中大へ。近い将来の日本代表入りも期待される。