福岡大大濠28年ぶりV 世界見据えた片峯監督「天国の田中先生に報告を」

  • 試合後、福岡大大濠・片峯監督(左)は岩下と握手を交わす(撮影・滝沢徹郎)

<バスケットボール・SoftBankウインターカップ全国高校選手権:福岡大大濠59-56帝京長岡>◇男子決勝◇29日◇東京体育館

福岡大大濠が、初優勝を目指した帝京長岡(新潟)との激闘を制し、28年ぶり3度目の優勝を果たした。互いに得点が伸びず我慢比べの展開が終盤まで続く中、攻めの姿勢を貫いて勝ちきった。10年3月に就任した片峯聡太監督(33)の世界を見据えた育成と強化が実を結んだ。

   ◇   ◇   ◇

【スコア】ウインターカップ2021>

1点差に迫られて迎えた残り11秒。福岡大大濠の主将岩下がリングへ向かってドライブした。何度もはね返された身長205センチのセンター・コネの手をかいくぐってのシュートはリングからこぼれた。しかし、そこに2年の湧川が飛び込み、ボールをタップ。3点差となり勝負が決まった。

世界を見据えて育成と強化に取り組んだ片峯監督の思いが選手たちに乗り移った。留学生のコネに9回のブロックショットを許したが、選手は果敢にドライブ。最後まで粘り強く戦った。

準決勝の仙台大明成戦で9本の3点シュートを決めた岩下は「シュートがダメでも粘り強く守備をしよう」と切り替えた。終盤拮抗(きっこう)した場面でも気持ちの面で崩れなかったのは1年前からのメンタルコーチ導入の成果だった。「これだけうまくいかない中でも、選手が自分でメンタルを保ちながら、声がけなどを学ばせてきた」と片峯監督は胸を張った。

10年3月に故田中国明氏から23歳で監督を引き継いだ。退任後も総監督として帯同した田中氏は18年に遠征先で亡くなった。前回の優勝後は準優勝が6度。田中氏が率いた93年以来の頂点に片峯監督は「田中先生が東京体育館に忘れ物があると、おっしゃっておられた。やっと優勝できて天国の田中先生に胸張って報告できます」と涙ぐんだ。

就任11年でようやくつかんだ優勝。しかし片峯監督のチームづくりは進化の途中だ。「日本代表になる選手、世界と戦える選手を育てるためにやっている」。U-19日本代表に育てた岩下に続き、来年は193センチの湧川に岩下のつけた13番を継がせる。「世界で戦うために彼には1番(ポイントガード)のポジションをやらせる」。片峯監督の戦いはまだまだ続く。【桝田朗】

◆男子ベスト5 川島悠翔、岩下准平、湧川颯斗(以上福岡大大濠)島倉欧佑、コネ・ボウゴウジイ・ディット・ハメード(以上帝京長岡)