【高校ラグビー】報徳学園NO8石橋チューカ、女手一つで育ててくれた母にプレーで恩返し

  • 東福岡に敗れ準優勝となり、表彰式で悔しそうに整列するNO8石橋(中央)ら報徳学園の選手たち(撮影・前田充)
  • 表彰式を終え、握手を交わす両チームの選手たち(撮影・前田充)

<全国高校ラグビー大会:東福岡41-10報徳学園>◇決勝◇7日◇大阪・花園ラグビー場

高校3冠をねらったAシードの報徳学園(兵庫)だが、東福岡に屈し、偉業達成はならなかった。

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NO8石橋チューカが、相手の右足に向かって飛び込んだ。決死のキックチャージ。顔を背けることなく、上半身を真っすぐ伸ばし、左手首でボールをはじいた。敵陣22メートルライン内側。このチャージからボールをつないでCTB炭竃(すみかま)が同校初の決勝で貴重な1トライ。石橋は「トライにつながって良かった」と淡々と答えた。

石橋は、ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれた。2歳で両親が離婚。以降女手一つで育てられた。

母の淳子さんは常に仕事をしていたため「おふくろの味」の記憶もほぼない。職を転々として、現在は配送業で生計を立てる。家事と仕事で忙しい中でも、小学生の夏休みに地元・姫路の木戸ダムに連れて行ってもらったことは、家族の中で一番の思い出だ。

高校入学後は下宿し、現在は家族と離れて暮らす。それでも、中学生の頃に母親からかけられた「もっとすごい選手になって広い世界に行ってほしい」という言葉は、いつも胸にある。

母親も現地で見守る決勝戦、プレーで恩返ししたい-。その思いが、捨て身のキックチャージになった。

初優勝は逃したが、兵庫県勢で76大会ぶりの準優勝。石橋は、悔しさをにじませながらも「ずっと見てきた場所。悔いの残らないプレーができた」。卒業後は京産大で競技を続ける予定。レベルアップするために、体作りから始める。

大舞台で堂々たるプレーを見せた。西條監督は「花園でも1戦1戦成長して、たくましいチームになった」と準優勝を遂げた選手をたたえた。【竹本穂乃加】