【沢木敬介】“キャップの安売り“はしてほしくない 問われるゲームプラン、経験値の行く先

  • 沢木敬介(2024年11月19撮影)

<ラグビーテストマッチ・リポビタンDツアー2024:日本14-59イングランド>◇24日(日本時間25日)◇アリアンツ・スタジアム(英ロンドン)

今季最終戦を迎えた日本(世界ランク13位)が、イングランド(同7位)に完敗した。

前半で主導権を握られ、計9トライを献上。対戦成績は13戦全敗となった。

1月に就任したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC、64)は、1季目をテストマッチ4勝7敗で終えた。

15年W杯ではジョーンズHCを支えるコーチとして南アフリカ戦勝利に貢献した沢木敬介氏(49)が、日本の現状を分析した。

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ゲームプランが見えてこない試合が続いている。選手の頭に「?」が残りながら戦っている印象がある。

日本のタックル成功率は77%と低く(総数117、成功90、失敗27)、イングランドは86%(総数168、成功145、失敗23)。タックル数が少ないが、ボールを持っている時間の割合も48%-52%と伸びていない。防御時の我慢強さで負けており、効果的な流れも作れていないといえる。一例が自陣22メートル以内での選択。無意味なラックを重ね(=相手のタックル数は増える)、最後にキックする。同じキックで前進するにしても、体力を消耗し、蹴った後の攻防も劣勢になる。ミスは減らしたいが、80分間の試合では一定数出る。それよりもミスが起きやすい展開に、日本の戦術で持ち込んでしまっている。

イングランドも6月の日本戦勝利を最後に、5連敗で迎えた一戦だった。状態は決して良いとはいえず、攻撃に出る日本に対して多くのスペースを与えていた。日本もボールを持って前進できる選手が複数いるが、生かし切れていない。選手が意思を持った上で生まれたミスよりも、迷いや、勢いのままにプレーしたミスが目立った。ロックのディアンズが出場停止。ラインアウトで重圧をかけられない側面などもあるが、試合をどうコントロールしていくのか、が見えなかった。

ジョーンズHCが現段階であえて、そういった戦いをしているのかは分からない。良くなった点が見えていれば前進できると思う。

一方で“キャップの安売り”はしてほしくない。代表は日本の選手全員が「そこでプレーしたい」と目指し、憧れる場所であってほしい。テストマッチは国を代表して戦う。国際レベルで通用する選手かどうかは、日本ラグビー界の課題になっている国際レベルの選手育成を目指した環境面の整備を含め、テストマッチの前段階で見極めていくべきだ。「試した結果、負けてもいい」という感覚でやる試合ではない。プロップ岡部、フッカー原田らがW杯を見据え、強豪国と敵地で戦う経験ができたことには大きな価値がある。今季で20人が初キャップをつかんだというが、3年後のW杯オーストラリア大会に、どれだけの人数が残っているかが大事になる。(横浜キヤノンイーグルス監督)

◆24年のテストマッチ

日本17●52イングランド(6月22日、東京・国立競技場)

日本23●25ジョージア(7月13日、宮城・ユアテックスタジアム仙台)

日本14●42イタリア(7月21日、北海道・札幌ドーム)

日本55○28カナダ(8月25日、カナダ・バンクーバー)

日本41○24米国(9月7日、埼玉・熊谷ラグビー場)

日本49○27サモア(9月15日、東京・秩父宮ラグビー場)

日本17●41フィジー(9月21日、大阪・花園ラグビー場)

日本19●64ニュージーランド(10月26日、神奈川・日産スタジアム)

日本12●52フランス(11月9日、フランス・サンドニ)

日本36○20ウルグアイ(11月16日、フランス・シャンベリー)

日本14●59イングランド(11月24日、英ロンドン)