第24回北京冬季五輪の閉会式が20日、国家体育場(鳥の巣)で行われ、17日間の熱戦が幕を閉じた。日本は冬季最多のメダル18個(金3銀6銅9)を獲得。18年平昌大会の13個を上回った。フィギュアスケート女子のROC(ロシア・オリンピック委員会)代表カミラ・ワリエワ(15)がドーピング疑惑に揺れるなど負の面も際だったが、初の銀メダルに輝いたカーリング女子日本代表ロコ・ソラーレなど、選手の活躍に救われた五輪となった。
◇ ◇ ◇
勝って負けて、笑って泣いて。史上初めて決勝まで進んだロコ・ソラーレが大会最終日まで日本を熱くした。喜怒哀楽がストレートに国民へ届く。スポーツの面白さ。笑みがはじけるアイス、響き渡る「ナイスぅ」。1次リーグ最終戦でスイスで敗れて「涙がかれた」(藤沢)ほど泣いたかと思えば、準決勝では笑顔でリベンジ。最後こそ英国相手に力尽きたが、吉田夕は笑う。「負けて終わっても人をハッピーにさせる銀メダルがあるんだなって。うれしくなってきました」。
明暗のコントラストが激しい大会だった。大会前は「外交的ボイコット」で暗雲が垂れ込め、開幕後は悲劇が続いた。ジャンプ混合団体の高梨沙羅はスーツ規定違反で泣き崩れ、スノーボード平野歩夢は3度目の正直の金メダルも水を差された。不可解な低採点に「納得できなかった」。閉環(クローズド・ループ)と名付けられたバブル下で陽性となり、4年に1度の夢が破れた選手も複数いた。
競技で明暗あれど、ここまで外的要因で荒れた大会は珍しかった。極めつきはROCのワリエワだ。大会中盤にドーピング疑惑が持ち上がると、冬季大会の華のはずのフィギュアに霧がかかった。連日、米ワシントンポスト紙など普段の競技会報道では見かけないメディアが押し寄せた。スポーツ仲裁裁判所が出場を認めた後、国際オリンピック委員会(IOC)は大会成績を「暫定」扱いとし、メダル授与式を行わないと発表し、徐々に15歳を追い詰めていく。心が壊れた少女は、金メダルを確実視された試合で4位に沈んだ。4年前の銀メダリスト、先輩のメドベージェワが「地獄は終わった」と表現する日々から逃げられなかった。
一方で、運営の不備や負の側面がクローズアップされた大会をアスリートの言動が明るくした。責任を背負い込む高梨を金銀メダルの小林陵侑がハグすれば、スピードスケートの女子団体追い抜きでは、転倒で2連覇を逃し泣きじゃくる高木菜那を妹の美帆が抱きしめた。高梨はW杯へ旅立った。「応援してくださる方々を失望させる結果でしたが、ジャンプという素晴らしい競技の場に立つために前進していきたい」。高木美は2日後に金を取った。
昨夏もそうだった。開催反対の世論が大勢を占める中、史上最多58個のメダル量産で東京大会は一応の大団円となった。今回は冬季日本勢最多18個のメダル。最後を飾り、盛り上がりの象徴となったのがロコだった。メダル以外でも、羽生結弦は氷の会場を沸騰させた。3連覇は逃したが、五輪で初の4回転半に挑戦。「報われなかった今は今で幸せだな」。2連覇王者は敗戦を知った。「努力と結果の意味や価値について深く考えさせられる、これからの人生にとって大切な時間になった」。延期された東京大会から半年。再び2年周期に戻る。またドラマが生まれる次の五輪が待ち遠しくなった。【木下淳】