<日本テニス協会強化副本部長 松岡修造(46)>
20年東京五輪で、2つ大事なことがあります。1つはメダルの数という誰が見ても分かる基準。今、15、16歳のジュニアのアスリートには、東京に五輪が来たことで、すごいモチベーションになっている。東京五輪は、彼らのやる気の源になっています。それがメダルにつながることで、日本は大いに盛り上がるでしょう。
もう1つは、オリンピックを通じて、自分たちは、どんなことを考えているのかという文化を発信することが、とても大事になってきます。その心の準備をきちんとできるかどうか。準備という点では、ハードの設備などは問題ないでしょう。しかし、おもてなしなど、心を通じた発信の準備をきちんとすることが、オリンピックを通じて、東京や日本が世界でも認められるのだと思います。
2年前のロンドンでのパラリンピックには、その心があったのではないでしょうか。その国が、スポーツに対してどのような考え方をしているかという基準は、パラリンピックに対する取り組み方で見ることができます。日本は、スポーツを「見る」、「する」というところでは、相当、できあがってきました。しかし、「支える」という部分が、まだ足りていないのではないでしょうか。
東日本大震災に関しても同じです。五輪よりも、もっとやるべきことがあるだろうと考えている人も多いと思います。だからこそ、東京五輪は、苦しんでいる被災地や被災者の方を含めて、より前を向いていこうというものに変えていかなくてはならないと思います。五輪が来るから忘れてしまうのではなく、より思い出す。より心を1つにできる、そういう東京五輪パラリンピックになってほしいと思っています。(取材・構成=吉松忠弘)(2014年9月10日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。