<DeNA監督 中畑清(61)>
日本でやる五輪だったら絶対に復活させるべきだと思う。野球とソフトボールはアメリカ発祥のスポーツだけど、日本でも国技と言っていいぐらい老若男女に浸透している。それほどのスポーツが東京五輪で復活できなかったら、永遠に復活は難しくなるんじゃないか。実現すれば、その頃には日本ハム大谷、阪神藤浪、楽天松井裕らが主力になる。金メダルも期待できる代表ですよ。アテネでヤワラちゃん(谷亮子=柔道48キロ級)が金メダルを取ったときの感動、頑張りを見たときは、日本人で良かったと思った。あれだけの感動を与えられるスポーツはなかなかない。
アテネでは(巨人軍終身名誉監督の)長嶋さんの病気もあって監督をやらせてもらった。経験したことのない未知の世界で、しかも「長嶋ジャパン」という肩書。アマチュア時代に日米野球で日の丸を背負ったことはあったけど、比じゃないくらいのプレッシャーだった。おかげで1カ月間、何もしてないのに4、5キロも体重がやせてね。
一発勝負の怖さも感じた。予選から怖さを感じながら戦ってきた。「勝って当たり前」という中でやってきた。今までは「プレッシャーを楽しみなさい」と言っていた長嶋さんが、「プレッシャーってこういうことだな」って言うぐらいだったからね。
五輪だけは特別な緊張感とすごいプレッシャーで、つらかった思い出しかない。もしかしたら、今の俺を支えている原点なのかもしれない。別世界の経験ができたから、今の俺には免疫力があるんじゃないの。DeNAの監督という立場になって、少々の挫折感とか負ける怖さは、あの時と比べれば大したことじゃない。経験は最高の財産になっています。(2015年01月14日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。