<ロス五輪男子体操鉄棒金メダリスト 森末慎二(57)>

 前回の64年東京五輪は記憶にありません。小学1年でしたが、まだ岡山の実家にはテレビがなかったため、体操の「た」の字も知りませんでした。ただ鉄棒は大好きだった。友達が野球をしている中、自分はいつも砂場にある鉄棒にぶら下がって、クルクル回っていたのです。

 小学3年で逆車輪、小学5年で車輪、小学6年で、車輪から宙返りもしていました。中学3年のときが72年ミュンヘン五輪。このときは自宅にテレビがあったので連日観戦。金メダリストの塚原光男さんの月面宙返りには興奮した記憶があります。すぐに見よう見まねで挑戦。着地に失敗し捻挫したことは苦い思い出です。ただ中学までは体操部がなかったため帰宅部で指導者は不在。本格的に取り組んだのは高校に入ってからでした。

 今や、どんなスポーツでもトップ選手になるためには幼少のころから取り組むのが当たり前です。自分の過去を振り返っても、子供たちの才能を発掘し、育成することの重要性を常に感じていました。東京・北区のナショナルトレーニングセンターが全国にできればとの持論もあります。その取り組みの一環として、2年前から「二子玉川アスリート倶楽部」(芳賀章代表)の理事を務めています。

 自分は大学も世田谷の日体大で、今の自宅も世田谷近辺。あるときの飲み会で「二子玉川出身の五輪選手がいない。ここで何かできないか」との話になりました。すぐに賛同するアスリートを探すと、体操の池谷幸雄、水泳の田中雅美、宮下純一らオリンピアン、プロ野球DeNA高橋尚成、サッカー元日本代表の遠藤雅大らが集結してくれました。

 昨年は二子玉川駅前でイベントを開催。今後もアスリート仲間とともに、地域の子供たちの指導、育成に励むつもりです。5年後の東京五輪・パラリンピックにも、何らかの形で貢献できればと思っています。

(2015年3月18日本紙掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。