<住友電工陸上部 渡辺康幸監督>
4月1日から私の新たな挑戦が始まります。東京五輪の舞台に指導者として立つために、住友電工陸上部の監督に就任します。東京五輪のマラソンでメダルを取る選手を育てる、そのために決断しました。
早大では選手としても指導者としても結果を残せたと思いますが、今度は世界で通用するようなランナーを育てたい。その思いで11年間務めた早大駅伝部監督を3月31日付で退きました。いま、日本マラソン界の低迷の原因が箱根駅伝にあるという批判の声も聞きます。それは大学で活躍した選手が世界にいく道筋が、きちっとできていないことに原因がある。私自身が現役時代は世間の期待を裏切った。大学時代から期待されながら、最後までマラソンでは成功できなかった。だからこそ、そんな私の手で箱根から世界へ羽ばたく選手を育てていきたい。
取り組むのは新しい実業団のスタイルです。他のチームと同じことはしたくなくて、駅伝ありきのチーム作りはしません。日本の長距離は駅伝がマストで、マラソンはオプション。それを逆にする。駅伝が悪いとは言わないけれど、駅伝で優勝を義務づけられるのは、指導者にとっていいことではない。
マラソンで成功するには年間計画のなかで、半年はマラソンを戦えるプロジェクトを入れていかないといけない。それぞれの専門家でチームを作って、指導する。フィジカルなど、スペシャリストがそれぞれの専門分野で教える形にして、スピードのある選手を生み出します。
どんなスポーツでも低迷期はあると思います。いま長距離の結果が出始めている米国も、10年近く低迷した時期がある。思い切ってかじを切ったときは、いきなり結果は出ないこともある。早く結果を求められるけど、我慢してほしい。東京五輪の2、3年前に結果が出て、「おもしろいね」「スピードに耐えられるようになってきたね」と言われるようにします。「住友電工は思い切ったことやっているね」と言われるようなチームにします。ぜひ期待して下さい。(2015年04月01日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。