<スポーツキャスター 浅田舞(26)>

 みんなが一緒になれる五輪、パラリンピックになったらいいな。東京だけではなく、東北の人も一緒になって盛り上がれるような大会になってほしいと思っています。

 ずいぶん前から5年後の舞台を目指している若い選手を取材しています。みんな日本で五輪に出たいという目標があって、そんな大きな夢ができたこと自体はすてきなことです。ただ、13年9月に東京開催が決まったときに、全力で喜べない自分がいたことも事実です。東日本大震災からの復興を考えるからです。決まった時のニュースで、被災地の方が「自分たちと違う国の出来事みたい」と発言しているのを目にしました。私は東北地方の出身者ではありません。偽善者かもしれないけど、「大丈夫なのかな?」って思うんです。

 最初に被災地に行ったのは3年前でした。大船渡の屋台村でお店をしているおばあちゃんにお世話になって、仮設住宅にも泊まらせてもらいました。そこの人たちは不思議で、復興の見通しもつかず、狭くて寒い仮設に住んでいるのに、すごく感謝していたんです。テレビもきて、布団もきてと。でも、みんなが助け合うのは当たり前のことですよね。

 もう4年たつけど、いまだに仮設住宅で暮らしている人たちがたくさんいて、ニュースでも汚染水が海に流れ出ている情報もあります。もとの生活には戻れない人がたくさんいます。20年に向けて、いろいろ壊して造るよりも、被災地の復興が1番なんじゃないかな。いまの状態では「う~ん」と複雑に感じています。いま、自分も普通に名古屋、東京で過ごしていて、汚染問題も不安です。子供が出来たときに、ここには住めるのか考えたりもします。そういう状態で世界中でいろんな人が来る。それも大丈夫なのかな、と。

 かといって、自分で大きなことを出来るわけではないですけど、みんながちょっとずつ忘れるなかで、自分が少しでも伝えられることができるなら、伝え続けていけたら良いかな、と思います。五輪が東京にくるから良くなるという展望ではなくて、五輪がくる前にちゃんと整えてほしい。夢を持って目指して選手たちのためにも、ですね。(2015年04月15日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。