<プロレスラー/武藤敬司(52=W-1)>
オレは東京五輪の追加種目に空手を応援しているんだよ。新極真会の緑健児さんから、K―1がブームだったころに、そちらに行くべきか相談を受けたことがあるんだ。空手の選手たちも、K―1を目指す選択肢ができたけど、オレは緑さんに、アマチュアとしての空手道を極めてほしい、アマチュア空手に必要なのは、五輪種目に入ることだと、アドバイスした。
オレは柔道をやっていたから分かるんだけど、五輪というのは明確な目標になる。アマチュアの最高峰だからね。強くなれば、人生の道が決まっていく、ステータスを勝ち取れる場が五輪なんだ。オレが言ったからかどうか分からないけど、それから空手界は五輪に向けて動きだした。そして、東京五輪でようやく、夢がかなうところまできている。だから、空手には頑張ってほしいね。
しかし、五輪で日本代表になるというのは、大変なことだね。4年に1回。その4年間の枠の中で、一番強い人しか五輪に行けないんだから。山下泰裕さんや、斉藤仁さんは柔道界でトップの人としてリスペクトしていたよ。五輪でもテレビで応援していた。斉藤さんは、92年にオレの結婚式にも出てもらったんだよ。おおらかで、まじめな人だったな。
五輪は、陸上や水泳を見ちゃうね。普段テレビでやらないし、個人競技で、一瞬の感動が得られる。感動したいと思って、ねらって見られるものでもないけど、一瞬の感動というのはすごいエネルギーがあるよね。92年の8月、北海道を試合で回っていて、夜ホテルで何げなくテレビをつけたら、バルセロナ五輪の水泳をやっていた。そこで岩崎恭子が優勝したんだ。あれは感動したね。
五輪に出ている陸上の砲丸投げややり投げ、体操、バスケットボール、柔道などの人材を集めてプロレス部隊をつくったら面白いと思うんだ。いろんな人材をミックスさせたら、それこそ別世界が生まれる。それをオレが見てみたい。空想だけど、面白いだろう? ハンマー投げの室伏広治選手なんか、ルックス、雰囲気、すべてそろっていて、スターになれると思うけどね。
(2015年9月16日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。