<菊池桃子(47)>

 兄が4歳上で、1964年(昭39)の東京五輪の年に生まれたんです。記念の年に生まれたことを自慢していて、子どものころ、「うらやましいな」とすごく思っていました。それが、五輪を意識した最初です。

 自分にとってのスポーツは、やるというより、もっぱら見る方です。五輪はよく見ています。前回の12年ロンドン大会では、特に銀メダルを獲得した体操の男子団体に感動しました。1人で戦うのも魅力がありますが、力を合わせるという姿にもらい泣きをすることが結構あって…。私、涙腺がゆるいんです。ほんの少しのミスで仲間の足を引っ張ってしまったり、それをカバーするような高得点を出すスーパーヒーローが現れたり。ドラマがたくさんあるから団体戦が大好きなんです。

 実はこの時期、息子が高校の語学研修でロンドンに行っていました。実際に陸上競技を見て、帰国した後でたくさんの話を聞いています。あの時は「息子はよい経験をしたな」と感じるだけ。まさか自分の目で直接、五輪を見ることはないだろうと思っていました。4年後が楽しみです。

 世界中から日本を訪れた人たちに、どうおもてなしをするのか。期待しているのは「和食」です。13年にユネスコの無形文化遺産に登録されましたよね。だから、外国の人たちも、どんなものかと興味を持ってくださるのかなと。最近は洋菓子を作るパティシエに人気が集まっているように思いますが、日本料理や和食を作る板前さんたちが、伝統的な和食文化を継承しながら、オリジナルなものを作ってくれそうで注目しています。

 現在任命されている1億総活躍国民会議の民間議員だからといって、特に五輪の見方が変わるわけではありませんが、社会的なことでいえば、選手や応援をする人たちで心を1つにできるような言葉が生まれるといいなと思います。英国の知人に聞いたら、ロンドン五輪では「多様性を受け入れて尊重しよう」を合言葉にしていたそうです。移民やマイノリティーの問題などを抱えていても、立場を乗り越え、心を1つにしようというテーマを掲げていました。五輪が終えた後になっても、テーマへの希望みたいなものが、人々の心の中に気持ちよく残ったそうです。知人はそれを「レガシー(遺産)」と表現していました。日本にも、レガシーが残るといいですよね。

(2016年1月20日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。