<歌手 橋幸夫(72)>

 東京五輪が開催される前年に、各レコード会社の競作で「東京五輪音頭」を歌いました。私も(所属する)ビクターから出したけど、歌唱した当時の記憶がほとんどないんですよ。五輪はデビュー4年目。寝る間もないほどすごく忙しい時でした。日本中がオリンピックで盛り上がっていたけれど、私はテレビを見る時間もないし、競技会場にも足を運べず、選手の活躍は新聞で読んで知るくらい。男子マラソンや女子バレーボール「東洋の魔女」の活躍とかね。その程度でした。

 だから、2020年の五輪はすごく見たいなと思っています。もちろん、競技場にも行きますし、開会式は必ず見ます。自宅が国立競技場のすぐ近くにあって、前の五輪で神宮外苑の選手村だった場所。私のウオーキングコースなんです。東京にいる時は2日に1度歩いているから、あの辺は庭みたいな感じです。

 注目している競技といえば、まずは野球。学生時代にやっていて、芸能界に入って作ったチームはノンプロのレベルぐらい強かったんですよ。子どものころに極真空手をやっていたので、空手も正式競技になったら楽しみ。ぜひ注目していきたい。

 2020年は歌手デビュー60周年の節目でもあるんです。その年までにオリジナルの五輪応援歌を1年に1作、計5曲作ろうと思っていて、現在は「カウントダウン音頭」「2020音頭」の2曲を出しています。60周年記念のアルバムとしてリリースしたいなと考えています。

 楽しみの一方で心配もありますよね。不安定な世界の経済状況とか。中国バブルがはじけたら、その影響で五輪どころじゃなくなると指摘する人もいますから。マイナスの話ばかりしても仕方ないけど、雰囲気として、国民みんながもろ手を挙げて、こぞってワイワイやろうという感じが今はしていないね。エンブレム、競技場、聖火台…。すんなりいかない問題が多いけど、日本にとって2度目の五輪を、何とか盛り上げていきたいですね。

 2度目の東京五輪は、間違いなく56年前とは全然違うものになりますよ。年間約2000万人の観光客が世界中から訪れているでしょ。彼らに豊かになった日本をぜひ見てもらいたい。日本の国民みんなが無条件で楽しめて、誇りを持って外国の人を迎え入れられる五輪になればいいなと思っています。

(2016年4月27日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。