<10年バンクーバーパラリンピック アイスストレッジホッケー銀メダリスト EY税理士法人 馬島誠(44)>
24時間、筋肉のことを考えています。アイススレッジホッケー引退後の14年6月にパワーリフティングを始めました。「夏のパラリンピックも味わいたい」。20年東京大会が決まり、腕力には自信があるから、すぐに何とかなるかなと思っていましたが、考えが甘かった。
最初は80キロスタート。今年6月の全日本選手権97キロ級で141キロを挙げて日本新記録を樹立したけど、世界では戦えない記録。230キロは上げないとメダル圏内に入れないので、車のナンバーも「230」に変更して、毎日、その数字を見て気合を入れています。
大学3年の時、測量のアルバイト中に6万6000ボルトの高圧電流に接触して、下半身に障害が残りました。90キロだった体重が、運動せず100キロ超の激太り。就職した会社の健康管理室のおばちゃんに「痩せなさい!!」と言われ、先輩の紹介でアイススレッジホッケーを始めました。体が大きい分、当たりの強さには自信があった。日本代表にも選出され、06年トリノ大会は5位、10年バンクーバー大会は準決勝で強豪カナダを破り、準優勝して念願のメダルを獲得しました。限界を感じて、その後、引退しましたが、もう1度、何かにチャレンジしたかった。
パワーリフティングのトレーニングに集中するために今年転職して、週6日、ジムに通っています。健常者の大会にも出場し、徐々に記録も伸びている。競技は単純動作だけど、バーベルは左右ぶれなく下ろし、胸上で静止させ、上げないといけない。実は緻密な動作で美しさもある。
本番まであと4年。東京大会では「230キロ以上」が目標です。夏のメダルも欲しい。毎日、壁にぶつかるけど、ぶつかることが成長につながると信じています。せっかくのチャンスだし、もう1度、この日本であの独特の雰囲気を体感したい。家族は自由にさせてくれます。それが一番の応援であるし、筋肉に集中出来る。応援してくれる方々の笑顔を見るためにも、スポーツ人生最後の悪あがきをしたいと思っています。
(2016年8月10日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。