<空手男子組手 西村拳(21=近大)>
昨年12月の全日本選手権は衝撃でした。日本武道館に入ると2階席、3階席まで人がパンパン。それが信じられなくて「空手にこんな時代が…。これが五輪効果か…」とあっけにとられました。天皇陛下も来られていて、20年東京五輪に空手が正式採用されたことによる注目を感じました。
これまで世間の空手のイメージは1パターンで、初対面の人に言われるのは「瓦割りやって ! 」。いつも「瓦割りはやりません…」と苦笑いで否定してきました。組手で見てもらいたいのはアクロバティックな技。相手との駆け引きを経て、一瞬の仕掛けやスピードある突きで勝負が決まる。スポーツとしての魅力を知ってもらいたいんです。
私の父は空手の元世界王者で日本代表監督も務めました。そこで息子に「拳」という名前を付けたかったのですが、8歳年上の兄が生まれたときは使用禁止漢字で断念。解禁後に生まれた私に回ってきました。名前は大好きです。ただ、物心ついたときから道着を着ていたのに性格は女々しく、逃げてばかりでした。
転機は中学生。塾に通っていたけれど勉強が大嫌い。そこで父に「塾が嫌やったら空手せえよ」と言われ「やると決めたら本気でやろう」と決心しました。土日は父の指導セミナーで「試合やれ ! 」とむちゃぶりされ、決まって大人にボコボコにされる。しかし、それで怖さが消えました。高校は生まれ育った福岡から強豪の宮崎第一に進み、2年生で総体優勝。勝つうれしさを覚えて、15年には全日本学生選手権で優勝できました。
高校では午前6時前に道場に入る生活。午後9時半が就寝前の点呼という空手漬けでした。そこでの土台を生かし、近大では頭を使うことを意識して取り組んでいます。相手の足の向き、癖…。観察することで空手の幅が広がっています。
昔は水泳もやっていたので、五輪といえば金メダルを量産していたオーストラリアのフェルプス。そんな「別世界」の大会が、自分が戦いたい舞台に変わりました。まずは五輪に出る実力を3年間でつけたい。人間性も高めて、成長した自分で20年を迎えたいです。(2017年2月8日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。