<東京都議会議員 塩村文夏(38)>
東京五輪・パラリンピックが来たことで、世界の成熟国家に目が向いた。目に見えない貧困や格差是正、待機児童、女性の働き方、動物愛護、受動喫煙問題…。
1964年(昭39)の東京五輪では新幹線や高速道路という目に見えるインフラが整備され、高度経済成長へとつながった。今回は目に見えない「人を大事にする」という社会システム、社会教育が、じわりじわりと向上していると思う。「五輪」がフックになっている。そういう意味で五輪が来たことは意味がある。
都は「都民の70%がスポーツをしよう」という目標を掲げている。スポーツにより健康寿命を延ばせれば、医療費も下げられる。私は議員になってから体を動かす機会がかなり減った。今は自家用車で出勤しているので。前職の放送作家時代は取材に行くのに地下鉄を使っていたから、おのずと歩く量は多かった。都民が運動がしやすくなるよう、働き方の環境も変われば良いと思う。
都議を1期4年間務めてきたが先日、地元広島から次期衆院選への出馬を決めた。聖火リレーは広島平和記念公園を通ってほしい。「復興五輪」という要素はうたわれているけど「平和の祭典」という視点が足りないと思う。日本は唯一の被爆国。その首都で五輪をやるのだから、増えている訪日外国人にその観点も訴えてほしい。
広島出身の都議として「予算を取って被爆体験を伝える事業をしてほしい」という要望を受けてきた。しかし、東京は「平和の継承」について後退していると思う。かつて都庁展望台で行っていた被爆写真展示会が、スペースの都合から豊島区での展示に変わった。豊島区が悪いわけではないが、やはり外国人観光客の数は都庁展望台の方が多い。
五輪本番はアスリートが頑張るため、絶対に感動のフィナーレが待っている。準備段階でごたごたが多いけど、感動で終わることを知っているからずるい。政治家はそこに甘えてはいけないと思う。
(2017年4月19日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。