<空手女子形 清水希容(23)>

 「空手はほぼ、五輪追加種目になるよ」。そういう声が聞こえてきても、私は昨年8月の正式発表まで気が抜けませんでした。決まった時はホッとして、本当にうれしかった。五輪に採用されたことを機に、空手を知っていただける場が増えます。これも、本当にたくさんの方のおかげです。

 追加種目入りがなければ、(昨年)秋の世界選手権で引退しようと思っていました。あの時は2年に1回の大会のことで頭がいっぱい。集中していました。だから東京五輪のことは、それが終わってから考えようと。強い気持ちで目指さなければ、途中で絶対に挫折するので。世界選手権で連覇した時に「五輪に出たい!」と強く感じました。世界の決勝は特別で、何度でも演武をしたい場所です。ましてや、五輪。それも武道の聖地・日本武道館でやる。「この景色をまた見たい」と思いました。

 五輪で採用された影響か、よく「空手界の綾瀬はるか」と言われます。個人的に大好きな女優さんなのでうれしいけれど、似ていなくて、いつも申し訳なく思っています。でも、そうやって空手を取り上げてもらえるきっかけになったのは、すごくありがたいです。

 小学生の頃は、習い事程度で空手をしていました。初めて出た中3の全国中学校大会では3回戦負け。すごく悔しくて「絶対に全国で優勝する」と母に約束し、東大阪大敬愛高に進学しました。元々は高校も、大学も、空手を続けていくと考えていませんでしたが、高3の全国高校総体で優勝。まだやりたいという気持ちが強く「成績が落ちたら大学をやめる」という条件で関大に進み、覚悟を決めてここまで来ました。

 今まで空手は、組手と形があることもあまり知られていませんでした。それが五輪追加種目となり、空手を始める子や、進学の節目で続ける子が急に増えました。形は演武するもので、私は多くの人の心に残る選手になりたい。東京では「金メダルを取りにいく」目標だけでなく、「それ以上に価値のある金メダル」を取れるように頑張っていきます。

(2017年6月14日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。