<東京五輪・パラリンピック大会組織委員会CFO(最高財務責任者)・企画財務局長 中村英正(49)>
派遣元の財務省では在米国大使館、フランス・パリにあるOECD(経済協力開発機構)などで働きましたが、組織委に来てからのこの3年3カ月、役所にいるときよりも具体的で厳しい交渉を国際オリンピック委員会(IOC)などと行い、(冷や)汗をかいています。
12月に開催経費の第2版を公表します。IOCとも「コスト削減」という同じ方向を向いているので現在、削減努力をしています。しかし、費用負担ばかりが注目されがちですが「暑さ対策」「セキュリティー」は人の健康に関わることであり、削減ばかり考えてもいけません。メリハリが重要です。
東京大会は競技会場を集めた「オリンピックパーク」がないので輸送と警備は手厚くせざるを得ず、その部分は費用増の可能性があります。しかし、会場に来た外国人が近くの街を観光するので、街全体が盛り上がるというプラスの効果もあります。
お金をあまりかけない工夫もあると思います。「暑さ対策」であれば、日本に向かう飛行機の中で注意喚起のビデオを流してもらう。会場で水、かち割り氷を配るなど。「暑さ対策」は、大会成功の最重要課題の1つであるだけに、組織委だけでなく、国や開催自治体と三人四脚でやっていくべきと思っています。
大会後に残したいレガシーについて個人的な思いは、子どもたちに「参画の意識付け」をすることです。今はインターネットで何でもできるし、コンビニで何でもそろう「自己完結型」社会。それを東京大会に直接触れることで「参画型」になってほしい。自分が参画したものが実際に大会に反映される。外国人とも積極的に話せば大会後「当たり前」と思うようになる。
マスコットを全国の小学生の投票で選ぶことになりましたが、他にも参画プログラムを増やしたい。アイデアベースですが、試合の合間に流す映像を「地元紹介ビデオ」にして、それを各地の子どもたちに制作してもらう。障がい者で会場に来られない方々が例えば、1カ所に集まって大会をご覧になっていれば、その映像を会場の大型ビジョンに映す。多くの方が参画できる機会をつくりたい。それが組織委の存在意義です。
成熟国家がなぜオリンピック・パラリンピックをやるのか―。「国、人種、立場を超えて1つになり、平和になれる」ことを目指したい。東京大会は必ず成功すると信じて、組織委一同頑張っています !
(2017年8月16日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。