リオ五輪では柔道男子100キロ超級の原沢選手が印象に残っています。絶対王者のリネール(フランス)との決勝、逃げ回られて銀メダル。普通ならば「あんなやつ強くない」とか「大したことない」とか言ってしまったり、態度に出てしまったりすると思います。しかし、言い訳もせず、感情を押し殺して、毅然(きぜん)と話をしてました。リオ五輪のメダリスト会見はたまたま練習後、定食屋でそばを食べながらテレビで見ていました。原沢選手が人格的にすごいなと思うと同時に、こんな所でのんきに飯食っている場合ではないとも思いました。

 その後、空手が東京五輪の追加種目に正式に決まりました。空手は今後は五輪の種目から外れる可能性もあります。一生に1度あるか、ないかのチャンスでうれしかったです。東京五輪は33歳。出られるのかなという気持ちも半分ありました。でも今は衰えたなという感覚はないです。継続してやれば、その舞台に立てると思っています。

 組手も形も性格がそのまま出るのが空手です。例えば、せっかちな人は攻撃しかしないとか。ちょっとずる賢い人とかはタイミングをずらして相手を動かしてから、ポイントを狙うとか。僕は優しいんです(笑い)。それは自分も相手にも。だから試合中、鬼になれない時があります。それは切り替えられるようにならないといけないですね。不思議なもので、話したことがない人でも、構えやプレースタイルから性格が推測できるんです。

 柔道も空手も礼儀を重んじるスポーツ。もしかしたら見ている人は派手なガッツポーズとかがある方がおもしろい人もいるかもしれないです。しかし、相手への敬意、礼儀を重んじるのが武道で、それがかっこいいんです。そんな魅力を東京五輪で世界に発信したいですね。

(2017年8月30日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。