東京での五輪開催が決まっても、正直あまり関心はなかったんです。五輪はメジャーな歴史があるスポーツの大会で、僕らには関係ないなと。でも、スケートボードが(16年に)五輪競技になって、驚きました。そこまで五輪って寛容なんだ、それほどオープンな組織だったんだ、って。
パルクールは自分の体を機能的に、自由に動かすためのトレーニング。ビルからビルに飛び移ったり、宙返りしたりというのは、その一部です。日本で「パルクール」を意識している競技人口は1000から1500人ぐらい。競技としてというより、好きだから、ライフスタイルの1つとしてやっているんです。
僕も15年に北米選手権で優勝し、16、17年と世界大会で3位に入りましたが、大会での成績を目指しているわけではなく、トレーニングの結果なんです。LDHと契約してCMやミュージックビデオにも出させてもらっていますが、これもパルクール。競技的な部分もあれば、ストリート(スポーツ)としてのカルチャー、テイストもある。音楽やアート、サブカルチャーもある。スケートボードやBMX(フリースタイル)も同じだと思います。
もともと五輪は意識していないし、関係ない世界だと思っていました。でも、それは僕らの主観で、先入観だった。五輪を知らなかった。東京大会でスケートボードがどう変化するか、逆に五輪がどう変わっていくのか。期待と不安の不思議な感覚です。でも、我々に目が向いているのも東京五輪のおかげ。(4月の)広島のFISEも注目された。普及活動をしてきた身としてうれしいです。
パルクールも五輪追加種目候補になり、24年パリ大会で入るとも言われています。昨年には国際体操連盟(FIG)にも入りました。「カルチャーが変わる」と反対する人もいる。でも「応援する」という人を拒否するのは違う。やってみなければ分からない。スポーツもカルチャーも変化はある。僕らが変化を閉ざしたら、その先も変化はなくなる。可能性を狭めてはいけない。
これまで、いわば「アンダーグラウンド」でやってきたけれど、五輪をきっかけにストリートが「オーバーグラウンド」になる。ただ、アンダーがなくなるのではなく、オーバーで広まればアンダーはより深くなると思うんです。光が強ければ強いほど影は濃くなりますから。競技として広まるとともに、カルチャーとして浸透していければ。「ストリート」と「オリンピック」は、そんな関係であってほしいと思います。
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