東京五輪の様子を時々、イメージすることがあります。観客席がバーンと建っていて、そこに数千人のファン。12年ロンドン五輪で、地元イギリス選手がスタート台に立った時の大歓声を今でも覚えています。東京もそうなってほしいし「ビビってちゃいけないな」と心の準備をしています。

16年のリオデジャネイロ五輪までに2度、五輪を経験しました。カヌー界の「快挙」はそれなりにやったはずですが、それは内輪のことでした。取り上げてもらえないことにも、一種の諦めがあった。だから「五輪でメダルを取れば変わる」と信じ「そこまで歯を食いしばって頑張ろう」と競技に向き合ってきました。

リオで銅メダルを取り、より厳しい目で見られるようになったと感じます。低い成績では許されないし、普段の振る舞いもそう。でも、自分を知ってもらい、カヌーを知ってもらい、東京に向けてのムードを作ることができればと思い、テレビなどにも出ています。

今年2月の平昌五輪は愛知の実家や、合宿先のオーストラリアでも見ました。スピードスケートの小平奈緒選手や、フィギュアスケートの羽生結弦選手のような「求道者」に憧れます。強すぎる人は「他人と競う」という姿勢のさらに先をいって、いかに自分の理想を形にしていくかを考えています。中学生の頃に読んだ歴史小説で好きになった宮本武蔵も、新撰組の土方歳三もそう。僕はまだ他人と競うことを無視して、理想を追いかけるところまでいっていないので、「うらやましいな」と感じます。

五輪ではカヌーの面白さ以上に「人」を見ていただきたいです。人生の全てを費やし、大一番がやって来ます。その時の表情、立ち居振る舞い、終わった時の姿を見て、生きざまから何かを感じ取ってもらえればと思います。19年からは東京五輪の選考会が始まります。今年は8月のアジア大会で2連覇しましたが、世界選手権は芳しくない成績で、自分の弱点にとらわれすぎていました。結果が求められる東京五輪までは残り2年。自分の仕事を徹底し、最後までやり尽くします。

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