64年東京五輪デザインの成功体験は今にも語り継がれています。大会エンブレムのデザイナー、亀倉雄策さんが制作したポスターは圧倒的でした。「東京中のストロボを集めて撮影した」という陸上のポスターはあらためてすごいと思います。

師匠の田中一光も64年のデザインに深く関わっていました。直接、話を聞きました。後の大物デザイナーになる若者が昼夜問わず組織委員会に集められ、ピクトグラムを始めとしたデザイン制作に努めたといいます。

先人たちを尊敬し、20年東京五輪のピクトグラムは、64年のレガシーを踏襲しました。いくつか64年大会からポーズが変わったものを説明します。

ボクシングは似ているように見えますが、20年版は左腕をピンと伸ばして迫力を出しました。体操は女子の平行棒が一番美しいという結論になりました。

馬術系で馬を半分だけしかデザインしなかった理由は、全体を入れると、どうしても人が小さくなってしまうからです。ウエートリフティングは、頭の位置にこだわりました。どの位置が最も重そうに持ち上げているかを議論しました。約2年の制作過程で、徹底的に話し合いました。

ピクトグラムを含めた20年東京五輪の全体デザインは、大会と相乗効果を生み出すものができたらいいなと思います。「東京の課題をデザインで解決する」ということです。

東京はこれだけ過密都市なので移動や混雑をすごく心配しています。単なるインフラを整備するのではなく、デザインで解決できることがあるんじゃないかと思っています。

スマホで見られる大会のホームページを工夫して、日本人も訪日外国人も楽しく見られるようにする。競技会場への入場の際、待ち時間が苦にならないよう、テクノロジーを使った仕組みをつくる。それらをデザインで解決できればと思います。

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