文化放送の寺島啓太アナウンサー(32)が、在京のAM民放ラジオ局ではアナウンサーとしてただ1人、平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)に派遣され、現地で奮闘している。

 寺島アナウンサーにとって、五輪への派遣は初めてだ。現地では、羽生結弦(23=ANA)が66年ぶりの連覇を成し遂げたフィギュアスケート男子個人など、氷の競技が行われる江陵(カンヌン)のメディア村を拠点に、スキーなど山の競技が行われる平昌など各地を取材で回り、各国のテレビ、ラジオ各局が世界に映像、音声を発信するIPCで、日本人メダリストのインタビューや生番組への出演、その他の業務を行っている。

 江陵から平昌など各会場には、10分おきに運行されているメディア向けのバスで移動するが、移動には40分から1時間程度、かかる。その上、10時開始のフィギュアスケートのように午前中に開催される競技もあれば、スキージャンプのように夜に開催され、深夜まで取材が続く競技もある。

 ジャンプ女子ノーマルヒルで日本人初の銅メダルを獲得した高梨沙羅(21=クラレ)が、メダル獲得から一夜明けた13日午前10時から平昌で会見を開いた際、「メダルを取った後、どのように過ごした? 眠ることは出来た?」と聞かれた際、次のように答えた。

 高梨 私は、その後にドーピングコントロールに行って、帰ってきたのが(午前)3時ごろだったので、いろいろ回って、ここにいます(笑い)

 「いろいろ回った」中には、取材も含まれているだろう。寺島アナウンサーは、高梨の銅メダル獲得の瞬間を競技会場のアルペンシアスキージャンプセンターで取材した後、会場近くのIPCに移動しテレビ、ラジオ各局に何時、何分、何秒まで細かく調整された取材日程に従って高梨のインタビューを行い、明け方4時に寝た。その後、午前6時半にはバスに乗って再びIPCに戻り、同局の番組「The News Masters TOKYO」(月~金曜午前7時)の、生放送内での五輪リポートへの対応を行ったという。

 食事は、時間があればメディア村内のレストランで食べるが、時間もなくクッキーなどお菓子で済ますことも少なくないという。それでも、高梨や複合個人ノーマルヒル銀メダリスト渡部暁斗(29=北野建設)、スノーボードハーフパイプ(HP)銀メダリスト平野歩夢(19=木下グループ)を取材し「メダル獲得の瞬間に立ち会え、メダリストにインタビューできて感動しました。派遣されて本当に良かったと思っていますし、20年東京五輪も絶対に取材したいです」と早くも意気込んでいる。

 寺島アナウンサーは、平昌五輪を取材した上で感じた、東京五輪の課題についても熱く語った。

 寺島アナ 平昌では、メディア村を含めて建物が寒すぎます。それが夏の東京では一転、暑すぎるのです。その対策をどうするかは、真剣に考えなければいけない課題です。またメディア村のレンジや洗濯機のスイッチに書かれてある説明書きが、全てハングルなんです。英語の説明がついているだけで、分かりやすいのに…と思います。メディアを含めて、外国人の方々への気遣いが出来てこそ、本当に「お・も・て・な・し」が出来たと言えるのではないでしょうか?

 滝川クリステルが、東京五輪招致を決めた13年9月にアルゼンチン・ブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会でプレゼンした際の名言を、具体的な形にすることの大切さを、寺島アナウンサーは酷寒の平昌の地でかみしめている。【村上幸将】