いきなり飛びだした「豪太節」。今大会も、テレビの前から離れられない。
いよいよ始まった雪と氷の祭典。夜に開会式を控えた9日には、フィギュア団体のショートプログラムなどが行われた。注目はモーグル予選。男子の堀島ら日本人のメダル候補がいるからだけではない。テレビ解説が三浦豪太氏だからだ。
モーグル元日本代表の48歳。94年リレハンメル、98年長野と2大会連続で五輪に出場している。年配の人には「冒険家・三浦雄一郎の次男」と言った方が分かるもしれない。現役引退後の02年ソルトレークシティー五輪から務めるテレビ解説が、とにかく楽しい。
この日の男子予選、フィンランド選手がエアで回転し過ぎて転倒した。「モーグルは助走が短いので、飛びだす前から予備動作をしている」という説明。十分回転のタメを作って飛びだした時が「タケコプターのようです」と表現した。
「タケコプター?」。頭の中に?マークが飛び交ったが、何となくニュアンスは分かる。競技特有の技術の解説に「ドラえもんのヒミツ道具」を使うあたりはさすが。選手の食べ物の好き嫌いまで踏み込んだ「詳しすぎる解説」が持ち味だが、何げないコメント1つ1つのセンスも抜群だ。
フィギュアやジャンプなど普段から見慣れた競技もあるが、ほとんどは4年に1回しか見ないのが冬季五輪の競技。もちろん、競技経験者も少ない。テレビを見るのは競技を知らない人が多いのだから、難解な専門用語で技術論を語られても理解できない。だからこそ、三浦さんのような「やさしくて、分かりやすい解説」が必要になる。
前回のソチ五輪では、三浦さんら解説者が注目された。彼らに共通するのは、競技の楽しさ、魅力を伝えたいという思い。「マイナー」と言われる競技だからこそ、五輪を機会に多くの人に日本選手の活躍を、競技そのものを見てほしい。時に「応援解説」になるのも競技への、選手への愛が強いからだろう。テレビだけではない。活字メディアも同じこと。楽しく、分かりやすく、冬季競技の魅力を伝えていかなければならない。「タケコプター」を聞いて、そう思った。【荻島弘一】