氷点下20度の極寒が心配されたが、天候にも恵まれた。氷点下2度は「暖かい」と感じるほど。そんな平昌(ピョンチャン)でいよいよ五輪(オリンピック)が始まった。この日、テレビで開会式を見たほとんどの日本人は「次は東京」と思ったはずだ。君が代は誰が歌うのか、入場行進で流す曲は何か、トンガの旗手はまた上半身裸か、そして最終聖火ランナーは…。思いが2年後の東京大会へ飛んだ人も多いはずだ。
いつものことながら、五輪開会式は感動する。しかし「メッセージ性」となると何を伝え、何を訴えたいのか分からない式もある。開催国の歴史を振り返るのは「定番」だが、それだけでは「国の紹介」にすぎない。世界に発信するものがそれだけでは寂しい。
「ひとつになる情熱」をテーマに始まったセレモニー。韓国で日本水軍から祖国を守ったとされる亀甲船が出てきた時は、その先が心配になった。もしかしたら、慰安婦像まで出てくるのではないかと。歴史を振り返ることの危うさも感じた。まあ、その心配はなかったけれど…。
式のメッセージは分かりやすかった。「平和」「南北融和」。入場行進の最後は、韓国と北朝鮮の選手が統一旗を持つ「コリア」だった。会場がもっとも沸いた時でもあった。最終点火者のフィギュアスケート元女王、金妍児(キム・ヨナ)さんに聖火を渡したのは、韓国と北朝鮮のアイスホッケー代表選手だった。「ひとつになる」が、分かりやすく伝わった。大会をきっかけに、真に南北の距離が近づけばと願った。
昨年12月、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会は開閉会式の全体コンセプトを発表した。「平和」「共生」「復興」「未来」「日本・東京」「アスリート」「参画」「ワクワク感・ドキドキ感」。4つの式典を1つにとらえ、起承転結の構成にするという。すでに4式典の全体構成を検討する演出メンバー8人も決まり、動き出している。
ロシアのドーピングや北朝鮮の参加問題などに揺れた今大会だが、開会式が終われば「さあ競技だ」と期待が高まる。東京を世界に発信し、競技への期待を高める。2年後には「良かったね」と世界が言ってくれるような開会式が見たい。【荻島弘一】