フィギュア団体は、もういいんじゃないかな。日本が2大会連続5位でメダルを逃したからではない。前回ソチ大会からの実施で見慣れていないからでもない。あまりにも選手にとっての負担が大きいと思うからだ。個人戦までの期間が短ければ疲れが残るし、長ければ調整が難しい。

 ソチ大会では女子SPとフリーでロシアの金メダル獲得に貢献したリプニツカヤが個人戦で5位と惨敗。同じく男子の皇帝プルシェンコ(ロシア)は、個人戦を棄権した。心身ともに疲労があったことは否めない。今回も団体出場選手の個人戦への影響が心配だ。

 宇野は男子SPで1位になった後「本番では」と口に出した。慌てて「個人戦では」と言い直したが、日本の選手にとっては「調整の場」でしかない。男子フリーの田中は「五輪の雰囲気で滑ることができた」とコメントしたが、日本チームに「メダルを目指す」という緊張感はなかった。

 もちろん、悪い面ばかりではない。団体も個人も同じメダル。金のカナダは大喜びだった。4種目に平均的な力が必要だから、日本にとってはペアやアイスダンスの強化につながる可能性もある。何よりも団体は盛り上がる要素がある。ただ、日程は疑問だ。せめて個人戦後にならないか。

 ジャンプも複合も冬季競技の団体は個人戦終了後に行われる。夏季大会でも同じだ。20年東京五輪では柔道の混合団体が新種目として行われるが、これも競技の最終日だ。個人戦の勢いを持ち込めるし、悔しさを晴らす場にもなる。

 できないのは、フィギュアスケートに「伝統」があるから。100年以上前から「五輪の華」。1924年の第1回シャモニー・モンブラン冬季大会から唯一女子の参加が許された競技として実施され、それ以前の夏季大会でも行われていた。「競技の最後は女子シングル」を守るために、団体を無理やり個人戦の前に持ってきたのだろう。

 五輪競技にとって、種目数増はプラス。メダル数増は普及につながり、マーケティングにも効果がある。団体種目増は国際オリンピック委員会(IOC)の思惑とも合う。それでも、選手への影響は慎重に検討する必要がある。いつだって「アスリート・ファースト」を忘れてほしくない。【荻島弘一】