やっぱり王者ホワイトは強かった。平野は前日の予選よりも高難度の技を見せたが、得点は同じ95・25。「もっと高いはず」と怒る人もいるだろうが、もともとスノーボードの採点は絶対的な評価ではない。技に固有の得点があるわけではなく、審判の主観が入った全体の印象点。順位をつけるために、後ろに2人残している平野の点は抑えられた。審判6人全員がホワイトを平野より高く評価。今大会でささやかれた「王座継承」を、王者自身が力で阻止したということだ。
2大会ぶりに王座に返り咲き、22年北京五輪も狙うというホワイトは、周囲に「東京五輪にも出たい」ともらしたといわれる。Xゲームでは冬季の王者であると同時に、夏季でもスケートボードで過去2度優勝している。「冬の王者が夏の王者を目指す」なら、メディアも飛びつくだろう。
スケートボードが初めて実施される東京五輪にとっては大きい。スノーボードは98年長野五輪からだが、当初は出場を辞退するトップ選手も多かった。それを五輪に定着させたのがホワイト。ビジネスと割り切って、国際オリンピック委員会(IOC)もそれを利用した。絶対的スターの登場で競技は人気を集めて、地位を確立した。もし東京五輪にホワイトが出場すれば、五輪にスケートボードという「新しい価値」を求めるIOCも、大会側も大歓迎するはずだ。
もっとも、ホワイトが夏季Xゲームで優勝したのはハーフパイプで争う「バート」。東京五輪で行われるのは「ストリート」と「パーク」で、まったく異なる種目だ。もちろん、両種目をこなす選手もいるし「パーク」なら技術も生きる。それでも、スケートボード関係者は「現実的に、合わせるのは難しいだろう」と話す。強豪のそろう米国では代表になるのも大変だ。
スケートボードでスノーボードの練習をする選手はいるし、逆も多い。技術だけでなく、文化も近い。雪がないからスケートボードで、あればスノーボード、海ならサーフィン。そんな若者は大勢いる。ただ、五輪レベルとなると両方を同時にするのは決して簡単ではない。平野のように、スケートボードでもトップクラスのスノーボーダーはごくわずか。雪上と陸上はまったく違うのだから。【荻島弘一】