男子62キロ級で糸数陽一(25=警視庁)が、初出場の五輪で4位入賞を果たした。

 スナッチでは133キロで4位につけ、ジャークでは日本新記録となる169キロをマーク。6回の試技をすべて成功させ、トータルで日本新を2キロ更新する302キロを打ち立てた。ガッツポーズが飛び出すほど完璧な試技をみせたが、メダルにはわずかに3キロ届かず。それでも「悔しさもあるが、胸を張って帰りたい」と、表情はすがすがしかった。

 

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 身長158センチに宿るパワーは「神の島」と呼ばれる生まれ故郷、沖縄県久高島で育まれた。周囲8キロ、人口200人の島は、琉球神話の聖地。神々しい場所である代わりに、遊びに行くような場所はない。だから島中を走り回り、海に潜って岩を水中に持ち上げ、漁の網を引く。食卓に毎日マグロなど新鮮な魚が並ぶのは当たり前。マグロの頭をまるごと煮たものもよく食べた。小さな体には、自然と強靱(きょうじん)な筋力がついていた。

 豊見城高でスカウトされ重量挙げを始めると、すぐに全国大会で優勝。「自分にしか言い訳できない。自分に合っていると思った」。続ければ続けるほど、記録は伸びていく。昨年の全日本選手権で出したトータル300キロを五輪の大舞台で更新。「これで新しいステージに立てたのではないかと思う。310ならメダルを狙える」。4年後のさらなる進化を誓った。

 日大を経て、今は警視庁機動隊に所属する。東京に拠点を置く今も趣味は山登りと自然が力の源だ。今年、1合目から富士山登山に挑んだが、不運にもその日はどしゃ降り。6合目で心が折れかけたが「ここから先がメダルだ」と奮い立たせ、山頂に到達した。

 6人兄弟の長男。女手一つで育ててくれた幸子さん(50)を始め、家族は金銭的な事情からリオに応援には来られなかった。夢は、4年後の東京で、みんなに1番いい色のメダルを見せること。もうひとつは、顔が似ていると言われるサッカー長友佑都のように名を上げ、重量挙げをメジャーにすること。「メダルを取れれば、ウエートリフティング男子の知名度もあがる。女子はすごい選手がいるが、男子も負けないぞという気持ち」。大きな自信を胸に日本に帰る。【高場泉穂】