【金足農連載〈8〉】エース吉田大輝が好投も…初戦敗退 夏はノーシードから甲子園へ

第1シードの金足農は、春季秋田県大会でまさかの初戦敗退を喫した。5月11日、大館鳳鳴との2回戦でエース吉田大輝投手(2年)が好投するものの、1-2で敗れた。昨秋に県大会を制し、自信を持って臨んだ大会だったが、夏はノーシードから6年ぶりの甲子園出場を狙うことになる。どんな試合だったのか、振り返ってみたい。

高校野球

「夏はやってやります」

金足農が春季大会で初戦負けを喫した翌日、学校のグラウンドに足を運んだ。

大館鳳鳴に1-2で敗れた後、選手たちは意気消沈して球場を去った。あの姿が気になり、そのまま東京に戻る気になれなかった。

グラウンドに着くと、ちょうど投内連係の練習をしていた。エース吉田大輝(2年)は必死の形相をして、全速力でベースカバーに入っていた。

前日の試合は投内連係のミスで決勝点を奪われたのだった。

続く内野ノックでは、高橋佑輔コーチが次々と放つ打球に、選手たちが飛びついていく。選手たちから大きな声が上がっていた。

ノックをする高橋佑輔コーチ。2018年の準優勝メンバーで、横浜高との3回戦では逆転3ランを放った

ノックをする高橋佑輔コーチ。2018年の準優勝メンバーで、横浜高との3回戦では逆転3ランを放った

「今の捕れるぞ!」「それ、厳しくいこうぜ!」

活気ある練習風景だった。

数分見ているだけで、彼らが敗戦をどう受け止めたか分かった気がした。

ノックが終わると、キャプテンの高橋佳佑(3年)が「こんにちは」と言って、近づいてきてくれた。

「初戦で負けて、一からやり直すしかないって覚悟ができました。絶対やりますよ。春に負けてよかったと、そう言える夏にしたいと思います」

しばらくすると、大輝もニコッと笑って、あいさつしてくれた。

「夏はやってやりますよ。やるしかないって気持ちになっています」

これが金足農なのだと思った。雑草軍団は踏みつけられて強くなる。悔しさを胸に秘め、前に向かう姿を目に焼き付け、私は安心して追分駅へと戻った。

ピンチを脱し、雄たけびを上げる吉田大輝

ピンチを脱し、雄たけびを上げる吉田大輝

1点が遠い…

さて、選手たちは前を向いて進んでいるところだが、少しばかり春季大会を振り返ってみたい。

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。