【金足農連載〈10〉】スポーツ栄養士と歩む食育は〝チーム金農〟学校産の卵も食べた

金足農(秋田)は昨年から本格的な食育に取り組んでいます。部内改革「未来創造プロジェクト」の一環で、秋田県に4人しかいないスポーツ栄養士の菅野育子さんのアドバイスを受けて、日々の食事を見直しています。寮生活ではないため保護者を含めた「チーム金農」での取り組みだといいます。さて、どのような食育を実施しているのでしょうか。

高校野球

痙攣の原因も

「吉田大輝くんは、あまり朝に食べられないようです。まだ2年生なので秋以降に、さらに食事も見直して…まだまだ体が大きくなると思います」

スポーツ栄養士の菅野育子は、昨年5月から金足農野球部の食事にアドバイスを送っている。

チーム全体への講習会だけでなく、個々の食事を確認し、個人面談を行い、対策を講じ、悩みの相談にも乗る。

保護者と共に練習を見守る菅野育子さん(前列左から2人目)

保護者と共に練習を見守る菅野育子さん(前列左から2人目)

例えば、キャプテン高橋佳佑、主力の近藤暖都(ともに3年)は、プレー中にけいれんを起こすことがあった。

「十分な水分補給ができているのに、けいれんを起こすのはミネラル、カルシウムが足りていない可能性があるので、牛乳や豆腐などが必要ですね」

金足農は寮生活ではなく、自宅から通う。寮ならば食事を一括管理できるが、通学距離によって食事の時間も変わる。

「だから、選手だけで食育はできません。食事をつくってくれる保護者、補食のおにぎりを握ってくれる女子マネジャー、指導者の理解…すべての人々による〝チーム金農〟でやっていきましょうと、私はいつも言っています」

菅野はいつも金足農の試合をスタンドの保護者席で見る。2回戦で敗れた5月11日の秋田県大会もそうだった。

「昨年の夏まではコーチの方々と一緒に見ていたんです。でも、保護者席にいれば、いろいろな話ができるし、そこで食事の相談を受けることできます。だから、今は必ず保護者席で応援しています」

合宿での食事の様子(菅野さん提供)

合宿での食事の様子(菅野さん提供)

選手が「野菜も食べています」と申告してきても、その母から「野菜を食べなくて困っているんです」と相談されることもある。そんな差にも気付いて、対策を講じられる。

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。