笠井信輔アナ がん闘病乗り越え 生ききることを考える「1本の映画」と「妻の言葉」

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笠井信輔アナウンサー(59)にとって、6月4日は「完全に命を戻してくださった日」だ。2019年(令元)12月、悪性リンパ腫の「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」と診断され入院、治療を重ねた末、翌20年に医師から「完全寛解」と告げられた日。その日から丸2年が経過した今、笠井アナは生きること、人生を生ききることを、改めて考えている。その、きっかけになったのは、今春に出会った1本の映画だった。

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4月28日に都内で行われた映画「20歳のソウル」(秋山純監督)完成披露舞台あいさつの檀上に、笠井は司会として立った。語り始めて1分後、声には、ひときわ力がこもった。

「私は2年前に、がんのステージ4で4カ月半の入院、治療を行いました。ですから、この作品に描かれている闘病シーンは、涙が出るほど心が震えました」

冒頭のあいさつの2分24秒中、13秒を割いて、作品に重ねて自らの闘病を語った。1987年(昭62)にフジテレビに入社し、アナウンサー人生を始めて35年で、初めてのことだった。

映画は、千葉県船橋市立船橋高吹奏楽部に受け継がれる応援曲「市船soul」を作り上げて音大に進学も、がんで20歳の若さで亡くなった浅野大義さんの実話を元にした同名小説を実写化。一連の舞台あいさつの司会として声がかかったのは、春先だったが「がんで死んでいく人の映画の、舞台あいさつの司会を、がんで生き残った人がするって、すごく不自然」と感じた。

それでも、がんサバイバーだからという、たっての依頼を受け試写を見た。中盤までは画面から輝きがあふれ出るような青春が描かれるが、中盤からは苦しい闘病シーンの連続だった。