スカイツリー エレベーター停止、雪、カラスの巣・・・想定外の事態が発生した10年
東京タワーからバトンを引き継いだ電波塔・東京スカイツリー。開業10年、塔を見守り続ける人物に知られざる苦労を聞いた。
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<電波塔事業本部課長・工藤裕之さんに聞く>
日本国内で一番高い電波塔の東京スカイツリー(東京・墨田区)が5月22日で開業10周年を迎えた。地上から634メートル。建設中は想定できなかった事態が発生した10年でもあった。建設中からずっと塔体の安全を管理した担当者に振り返ってもらった。
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工藤裕之さん。東武タワースカイツリー株式会社の電波塔事業本部の課長で、現在47歳。東京スカイツリーの建設中から現在まで、電波塔としての東京スカイツリーを見守って来た人物だ。
同社の東京スカイツリータウン広報事務局課長の小杉真名美さんは「工藤がもっとも塔体のことについて細部まで熟知していて、一番詳しいですね」と話した。
電波塔事業における工藤さんのおもな仕事の内容について聞いた。
工藤さん 当然、上に行けば行くほど風力は強くなっていきます。だから、強風時において作業員が作業することはないんです。
事前に塔における屋外の風の状況を知ることができるのだろうか。
工藤さん 高さに応じて風向・風速計が設置されています。東京スカイツリーの近隣には鉄道が走っていて、民家も多数あるため、絶対に作業中に飛散物が出ないように万全の対策を講じています。作業をする際には単独行動はありません。常に2人以上で活動することにしています。屋外で活動する前には、作業用エレベーターを出てすぐの部屋で、作業員同士がお互いの持ち物を点検しあって、防災センターに「これから○人、外に出て活動します」という報告をすることを必ず義務づけています。
東京スカイツリーはキラキラとしたカラフルなライティングがされ、天望回廊(地上450メートル)や天望デッキ(同350メートル)からの絶景が楽しめるレジャー施設という側面が目立っている。だが、本来的には東京タワー(高さ333メートル)からバトンを引き継いだ電波塔となっている。
工藤さん 電波を送るのは各放送事業者です。それを支える電波塔としてハード的な部分について東京スカイツリーが安定稼働することが課題となっています。
1958年(昭33)、東京タワーが開業した。当時は周囲から誰でも赤く染まった鉄塔を視認することができた。時代を経て首都圏に高層ビルが立ち並ぶようになった。東京タワーの高さでは障壁なくスムーズに電波を各家庭に送信することが難しい状況になってきた。そこで高さ600メートル超の電波塔の建設が重要課題となった。