岸井ゆきの あふれる映画愛 多忙でも欠かさない映画館通い/ロングインタビュー

女優岸井ゆきの(30)が、耳の不自由なプロボクサーを演じた主演映画「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督、16日公開)で見せる表情は実に多彩で、これまでに見たことのないものだった。トレーニングと手話の準備期間3カ月、撮影、完成。笑顔で振り返りながら語るとともに、映画への愛情をたっぷり見せてくれた。

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◆岸井(きしい)ゆきの 1992年(平4)年2月11日、神奈川県生まれ。09年に女優デビュー。17年「おじいちゃん、死んじゃったって。」(森ガキ侑大監督)で映画初主演。映画はほかに「愛がなんだ」「空に住む」「やがて海へと届く」「犬も食わねどチャーリーは笑う」など。ドラマは、NHK大河「真田丸」、TBS系「99.9-刑事専門弁護士-」シリーズなど。舞台「気づかいルーシー」は再々演を重ねた。150・5センチ。

なっていく感覚

リラックスした表情で迎えてくれた。「お願いします!」の言葉と笑顔がはじけた。聴覚障害に向き合いながらプロボクサーとしてリングに立つ主人公を演じた岸井は、撮影の3カ月前からトレーニングと手話の練習を始めた。トレーニングには三宅監督も参加し、ボクシングトレーナーとしても活躍する松浦慎一郎が見てくれた。

「3カ月の時間の中で、ケイコを作れたことがまず、他の作品と違うところでした。(役にアプローチというより)ケイコに“なっていく”感覚でした。ケイコになっていく手助けをしてもらいながら、気付いたら切り離せないものになっていました。本当に没頭していました」

増量、筋トレで肉体を作り、糖質制限も行った。

「糖質制限で糖分が脳に回らないと、あまり頭が回らなくなっていくんです。自分自身とケイコ、という考え方はあまりできてなくて、ケイコに侵食されていっている感じでした。すべてを受け入れていました。驚いたり発見したりっていうのにもエネルギーが必要なんです。全部のみ込んで、受け入れる感覚に近かったです」

体が変わることで次の作品への影響を考えたり、恐れたりすることはなかったのだろうか。