【Dリーグ】DYM MESSENGERSが語る、体が動きだす瞬間/インタビュー

今シーズン、D.LEAGUEに新規参入したDYM MESSENGERS。実力派メンバーをそろえたとあって、各チームのマークも強烈で、每ラウンド激闘を繰り広げている。個々の技術と感性を最大限に尊重するスタイルは確実に東京ガーデンに浸透。中でも気になる2人。Takuya(27)とYasmin(26)にここまでの戦いなどを聞いた。取材は都内の中学校でのダンスイベント直後で、彼らが胸に秘めたダンスの魅力が興味深かった。

その他エンタメ

中学校の一室でTakuya(左)とYasminに聞いた

中学校の一室でTakuya(左)とYasminに聞いた

中学校の体育館が揺れ始めた

東京・江東区の中学校で行われた「ダンス披露講演会」にDYM MESSENGERSが講師役としてやってきた。午後の日差しが差し込む掃除が行き届いた校舎や体育館は、ストリートダンスの彼らには縁遠いように感じた。

それでも、D.LEAGUEの会場「東京ガーデン」の住所は江東区有明。司会役の先生も「同じ江東区でやっているので、興味がある人はD.LEAGUEを見に行きましょう」と呼びかけた。なるほど、まったく縁がないわけではなかった…。先生の中にも大きめのパーカーにダボダボのズボン(ワイドパンツですね)。メンバーか? と思ってしまうファッションに、教師像が揺れた。

CYPHER ROUNDに登場したTakuya ©D.LEAGUE 23-24

CYPHER ROUNDに登場したTakuya ©D.LEAGUE 23-24

CYPHER ROUNDで技を決めるYasmin ©D.LEAGUE 23-24

CYPHER ROUNDで技を決めるYasmin ©D.LEAGUE 23-24

体育館のスクリーンにうっすら浮かび上がったD.LEAGUEの動画を見て、メンバーが壇上に上がって、踊り出した。

スポットライトはない。舞台の前方より後ろの方が、蛍光灯に照らされている。10人が踊るにはスペースが狭い。それでも、MESSENGERSはスピーカーの音に合わせて揺れはじめた。

個々にステップを踏み、順番にソロを踊った。ポーズを決めれば、ドヤ顔を浮かべ、仲間たちが笑う。同じ動きはない。10人がそろって踊る場面でも、振り付けは違う。なのに、漂う一体感。ハウス、ロック、ヒップホップ、ブレイキン、ワック…ジャンルは違っても壇上では同じ音楽で結び付いている。

もっとも、300人の生徒は、そんなの言葉にしなくても、揺れ始めていた。暖かな午後の日差しで眠そうだった雰囲気が、ゆらゆらと消えていった。

Yasmin(左)は体育館の舞台上でブレイキンを披露した

Yasmin(左)は体育館の舞台上でブレイキンを披露した

10分間のダンスレッスンは、予定を変更して、参加した生徒全員で行うことになった。

最初の振り付けは「ケンケンパー」。右足からでも左足からでもいい、自由なスタイルでステップを踏み、最後は思い思いにポーズを決めた。なんだか、楽しい。

「ケンパーケンパー、ケンケンパー」とステップアップしていくと、最後方の席から男子生徒が壇上へ駆け上がった。飛び入りのソロダンスはぎこちないけど、楽しそうに踊ればかっこいい。ディレクターのTAKUYA(46)が「将来はMESSENGERSに!」とスカウトするころには、体育館はパーティー会場になっていた。

長身のTakuyaがジャンプすると、生徒たちは大喜び

長身のTakuyaがジャンプすると、生徒たちは大喜び

インタビューはメンバーの控室になった教室の一角で行った。30年以上記者をやっているが、校内インタビューは初めてのシチュエーションだ。

まさに放課後の時間帯。残ってもらったのは日本屈指のブレイキンの使い手で、凜(りん)とした表情のYasmin。そして178センチの細身の体を伸びやかに動かし、数々のバトルやコンテストでタイトルを手にしながら、肉声を聞く機会が少ないTakuya。謎めいてはいたが、チームの若き広報担当者さんの「物静かですが、気さくです」というアドバイスが心強かった。

いっせいにジャンプ! 全員が高い!

いっせいにジャンプ! 全員が高い!

初戦となったROUND.2

初戦となったROUND.2

――学校でのイベントは初めてのようですが、中学生に伝えたかったことは

Yasmin ダンスは楽しいっていうことをまず第一に伝えるつもりでした。

Takuya 僕はダンスの楽しさと、ステップとかふまなくても体を揺らすだけでいいんだよっていうのが伝わればと思いました。

――ケンケンパーから始めたのは意外でした。こういう教え方もあるんですね

2人 はい

――生徒さんも先生も楽しそうでしたが、ご自身で一番最初にダンスが楽しいと思った瞬間は

Yasmin 3年生とか4年生くらいに、ブレイキンのレッスンに通い始めて、1つ技ができるようになった瞬間、いろいろ覚えたいなっていう達成感含めの楽しさと、中学生くらいになって、何か音楽かかってる場所、フェスティバルみたいな場所に出たりとか、パーティーって呼ばれる場所に中学生ながらも呼んでもらって、結構大人が楽しんで踊って、そこでつながりもできて。自分も踊りたいなってきっかけになりました。

ベールを抜いたROUND.0

ベールを抜いたROUND.0

――最初にできた技って何ですか。

Yasmin チェア(両手のひらと頭の3点を支点にして、足を掲げた状態にする形)かな。あんまりはっきりとは覚えてないです。

Takuya 僕は友達ができて、ダンスはどの友達とも音楽を一緒に共有できる動きだと、そういうのに気付いた時、すごい楽しいな。音楽がかかれば自然に体が動き出したり、そういう瞬間がすごい楽しいなと思いました。

――どういう場面だったのですか? 例えば、子供のころのお遊戯会とか

TAKUYA ショーや舞台に立っている瞬間とかも楽しいんですけど、それ以外にも本当に日常で音楽が好きになって、例えば音楽がかかったらみんな乗れる、踊れるみたいな感じが楽しかったです。

ROUND.1のステージでYasminはフラッグをまとった

ROUND.1のステージでYasminはフラッグをまとった

――ストリートダンスと出会ったのはダンススクールですか

Yasmin そうですね。

Takuya 小学1年生だったから、6、7歳のころ、姉がクラッシックバレエをやっていて、いつも送り迎えについていってました。その教室に1個だけヒップホップダンスクラスができるってタイミングで見学しました。先生のダンスを初めて見た瞬間、「うおお、やべえ」となって、ダンスを始めました。

――ヒップホップも教えてくれるなんて、ぶっ飛んでるバレエスクールですよね

Takuya ですね。ぶっ飛んでますね(笑い)

©D.LEAGUE 23-24

©D.LEAGUE 23-24

――その後、お2人ともダンスのキャリアを積まれて、数々のバトルも経験されています。ダンスバトルで勝つ、秘訣はありますか

Yasmin バトルで勝つための秘訣は…私はバトルに勝つための練習、昔はしてたんですけど、最近はそのためっていうよりは、いろんな人に見てもらえる機会だと思うようになりました、そういう場所でベストの踊りができるようにしたいなって。いつも通りを保つというのが結構、自分の中では大事な秘訣になっています

――意識しないと「ハイ」になっちゃうんですか

Yasmin はい。ハイになりますね。緊張じゃなくていいハイなんですけど、会場の空気に飲み込まれたらだめなんで、こっちが会場をコントロールするぐらいのつもりでいます。会場を踊らせたい(笑い)。私が踊っている時に、みんなが踊ってくれたら、パワーが返ってくるんで、めちゃくちゃ楽しく踊れるし、そういうふうにできた時はだいたい勝てます。うふふ。

――確かに、僕はDリーグのステージは写真を撮りながら見ているのですが、Yasminさんから「圧」を感じます。いつ、どこから蹴りが飛んでくるのか…とか

Yasmin あはは!

――ROUND.1から飛んでましたよね。それも無表情で

Yasmin 蹴ってましたね(笑い)

Takuya 飛んでたね。

――無表情で飛んでくる、秘訣はあるんですか

本文残り57% (3845文字/6763文字)

編集委員

久我悟Satoru Kuga

Okayama

1967年生まれ、岡山県出身。1990年入社。
整理部を経て93年秋から芸能記者、98年秋から野球記者に。西武、メジャーリーグ、高校野球などを取材して、2005年に球団1年目の楽天の97敗を見届けたのを最後に芸能デスクに。
静岡支局長、文化社会部長を務め、最近は中学硬式野球の特集ページを編集している。