濱田祐太郎の感謝「松ちゃん、見てる~?」「俺は見てるけど、お前は見えへんやろ?」

濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう=34)は、生まれながらの視力障害を持つピン芸人。舞台に出る際には白杖(はくじょう)を手にし、関係者の介助を頼りにマイクの位置に歩いて行きます。舞台から下りる際も、介助者が近づくのを待たなければなりません。そんな彼が「大阪マラソン2024」にエントリー。同期の芸人「もも」まもる。(30)の伴走で、チャレンジラン(7・2キロ)を最後まで走りきりました。その心に秘めていたものは…。

お笑い

◆濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)1989年(平元)9月8日、神戸市出身。NSC(吉本総合芸能学院)35期。白杖を手に、舞台で漫談を披露するピン芸人。「R―1ぐらんぷり2018」優勝。YouTube「濱田祐太郎の盲目ライフチャンネル」公開中。趣味はアコースティックギター。三療(あんまマッサージ指圧、はり、きゅう)の国家資格を持つ。身長171センチ。近々の出演予定は、3月30日大阪・森ノ宮よしもと漫才劇場、4月1日大阪・よしもと漫才劇場など。

大阪マラソン7・2キロ完走

「大阪マラソン2024」の当日(2月25日)は冷たい雨が降り、風も強かった。ランナーの多くは雨よけのカッパを着込み、寒さ対策に努めた。

そんな悪条件の下、濱田はひたすら駆け抜けた。足に痛みが出ても、じっと我慢。「きずな」(盲目のランナーと伴走者が手にするロープ)の両端を濱田とまもる。が握りしめ、大阪城から中之島まで、7・2キロのコースを53分台で走りきった。

濱田実は、ゴールしても満足感はなかったんですよ。「やっと終わった~」「しんどかった~」が、本音です。

コースが曲がっている時や坂道になる時は、まもる。が「右にカーブ」とか指示を出すのですが、この日のまもる。は、ちょっといつもと様子が違っていました。

スタート位置につく前、控室にいる時から窓の外をながめ「俺、恐怖恐怖症やから、高いとこ苦手やわ」と意味不明のことを言ったり、胸に付けるゼッケンのことをワッペンと何度も言ったり…。

あんなに言い間違いするとは思わなかった。だから走っていても「まもる、大丈夫か?」と、内心ずっと不安でした(笑い)。

19年フル時間切れ

フィニッシュ後は、周囲の仲間や知人から「一気に10歳ぐらい老けたんとちがうか?」と言われた。それだけエネルギーを消耗し、精神的にも疲れていたのだろう。

大阪マラソンには2019年にも挑戦した。この時はフルマラソンに挑み、33キロ地点でタイムオーバー。無念の途中リタイアとなった。

濱田5年前も「しんどかった」という記憶ばかりです。当時はまだ20代だったし、あれから体重は12キロも増えてしまった。

なので、今回も最初は「フルマラソンに出ますか?」と誘われましたが「無理です。もっと短い距離なら」とチャレンジラン(7・2キロ)になりました。

5年ぶりとなる今回のエントリーは、テレビ番組の企画でもあった。

濱田練習風景から撮影してもらって、笑えるようなシーンも入れてくれるというので、ありがたかった。

12月には82・7キロあった体重が、レース当日は81キロでした。体調を考えて3週間前からお酒を控えたんですが、1週間前にはついつい飲んでしまいました。本番を走り終えたその日の夜、一度帰宅してシャワーを浴びてから、まもる。と祝杯をあげましたが、とても楽しいお酒でした。

Xに乗せた本音

今回の大会出場にあたって、X(旧ツイッター)で濱田は本心をつぶやいている。

「障がいのある人を勇気づけたいわけでも、障がいのない人を感動させたいわけでもない」

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エンタメ

三宅敏Satoshi Miyake

Osaka

大阪市生まれ。1981年に日刊スポーツ入社。
主に芸能ニュース、社会ニュースの記者・デスクを務める。
2011年に早期退職制度で退社。その後は遊んで暮らしていたが、2022年から記者として復帰。吉本のお笑い芸人などを取材している。
好きなものは猫、サッカー、麻雀、ゴルフ。身長171センチ。