石川祐希、武藤敬司…鍵山優真の言動に見えた「トップアスリート」との共通項

2024年世界選手権銀メダルの鍵山優真(21=オリエンタルバイオ/中京大)が、11月8~10日に東京・代々木第一体育館で行われたグランプリ(GP)シリーズ第4戦のNHK杯で連覇を飾りました。

ケガから復帰して2季目を迎えたシーズンのGPシリーズ初戦。「あの時以上のコンディションで臨めることがすごくうれしい」と、銀メダルを獲得した22年北京オリンピック(五輪)を上回るコンディションに、手応えを示しました

プロレスやバレーなど、ジャンルの異なるスポーツを取材してきた記者の目線から、鍵山の言動に見えた「トップアスリート」の共通項について描きます。(敬称略)

フィギュア

NHK杯の表彰式後、笑顔で記念撮影に臨む男子優勝の鍵山(2024年11月9日撮影)

NHK杯の表彰式後、笑顔で記念撮影に臨む男子優勝の鍵山(2024年11月9日撮影)

トップアスリートと呼ばれる人たちの共通点はなんだろうか。

明確な目標設定。競技への飽くなき探求心。「絶対にできる」という自己肯定感…。

当然、どれも一流を形作る重要な要素であることに違いないが、私がこれまで種々さまざまなアスリートを取材してきた中で特に実感していることがある。

それは、競技をけん引する選手たちは「徹底した自己管理」を行っているということだ。

はたかれ見れば、頑固とも思われるようなほどの強烈なこだわり。貫き通してきた一本の軸があることこそが、彼らの共通項であるように思う。

武藤敬司(2008年7月21日撮影)

武藤敬司(2008年7月21日撮影)

40年近く世界の最前線で戦い続けた「プロレスリングマスター」武藤敬司は、起床・睡眠時刻を始め、朝食を食べる時間やトイレに行く時間、ジムの駐車場に車を止める位置まで、全てを自身の意思で定めていた。23年2月に現役を退いてからも、その習慣は1ミリたりともぶれることはない。

パリ五輪でバレーボール男子日本代表主将を務め、現在は“世界最強クラブ”と名高いイタリアリーグのペルージャで活躍する石川祐希もそうだ。

石川祐希(2023年6月11日撮影)

石川祐希(2023年6月11日撮影)

午後7時~7時半の間に夕食を摂り、就寝前の2時間をストレッチや超音波器具などを使ったケアの時間に充てる、独自の生活リズムがある。3食の食事メニューも徹底。朝食は白米と卵にサラダチキン、フルーツとヨーグルト、夕食は野菜のスープと肉か野菜を焼いたものを摂る、といったように定番化されている。

代表のチームメートである西田有志や高橋藍ら後輩選手たちに「プライドがくっそ高い」とイジられても、笑顔でかわしつつ「俺はこうだから」と信念を曲げることがないのが石川だ。

2024年11月、東京・代々木第一体育館で行われたフィギュアスケートのGPシリーズ第4戦NHK杯。

私は公式練習から通じて4日間取材したが、男子で連覇を達成した鍵山優真の言動に、上で名前を挙げた2人のような「こだわり」の存在を強く感じ取った。

自身のGPシリーズ初戦で今季自己最高の300・09点を記録したが、実は数週間前まで家族に「コンディションが悪い」と漏らすほど苦戦を強いられていた。

NHK杯の男子SP終え笑顔を見せる鍵山(2024年11月8日撮影)

NHK杯の男子SP終え笑顔を見せる鍵山(2024年11月8日撮影)

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スポーツ

勝部晃多Kota Katsube

Shimane

島根県松江市出身。小学生時代はレスリングで県大会連覇、ミニバスで全国大会出場も、中学以降は文化系のバンドマンに。
2021年入社。スポーツ部バトル担当で、新日本プロレスやRIZINなどを取材。
ツイッターは@kotakatsube。大好きな動物や温泉についても発信中。