【プロテスト合格への道〈1〉】11回落選した笹原優美、なぜ挑戦を続けるのか

プロゴルフトーナメントでの活躍を目指し、鍛錬を続ける選手がいる。華やかな女子プロの大会に飛び込むためには、毎秋に開催される最終プロテストという大いなる関門がそびえている。合格率3%の狭き門だ。

笹原優美、31歳。2011年からプロテストを11回挑戦し、跳ね返された。この秋も最終テストに合格すべく、自身のゴルフを高める努力を重ねている。

一方で、動画配信やSNSでは、すでに人気を博している。290万回以上視聴されたスイング指導の動画もある。

そんな笹原のプロテスト合格への道を追う。

ゴルフ

◆笹原優美(ささはら・ゆみ)1992年8月4日生まれ、東京都出身。11歳でゴルフをはじめ、法政高卒業後、2014年から18年にかけてJLPGAツアーに64試合出場。16年は年間29試合に出場した。身長162センチ体重60キロ。

「何かしましょうか?」

穏やかな笑みを浮かべる笹原優美(写真提供JGDA)

穏やかな笑みを浮かべる笹原優美(写真提供JGDA)

今年も春が来た。プロテストを半年後に控えた春がやってきた。

笹原は4月12日、埼玉・高麗川カントリークラブで行われた日本プロゴルフ選手育成協会(JGDA)主催の「藤井かすみステップジャンプツアー2024」に出場した。前半ラストの18番ミドルホール、グリーンの左には、花をたたえた桜が残り、文字通り大会に華を添えていた。

写真を撮るべくスマホを向けると、笹原は「何か(ポーズ)しましょうか?」。そう言って、笑顔で手を振った。

ワンデーマッチの最終ホール。バーディーチャンスだったが、パーで締めた。この日は4オーバー76。119人中61位タイ。決して満足できるスコアではなかったものの、泰然自若に、自然体に、振る舞う。カートに乗る前、一緒に回った3人と、並んで写真撮影に応じた。同組の3人も、今秋のプロテストを目指す、いわばライバルだ。試合をともにした選手との、ラグビーで言う「ノーサイド」の光景だった。その場の空気を導いていたのが、笹原だった。

ホールアウト後にそろってピース。左から笹原優美、和久井麻由、高田花恋、田中珠蘭(写真提供JGDA)

ホールアウト後にそろってピース。左から笹原優美、和久井麻由、高田花恋、田中珠蘭(写真提供JGDA)

ゴルフは人間性。

笹原の大切にしている言葉だ。

「ゴルフにつながることにしか、基本的に生活してないので、全てゴルフにつなげるためなんです。私の元々のコーチの考え方が『スコアは人間性だ』という考え方なんです。人間性によって、思考回路だったり、何があった時にどういう選択、対応をするのかとか変わってくる。そういう人間性が、やっぱゴルフの場面場面でも選択肢としてあるじゃないですか。なので、人間性を高めることがゴルフ力を高めることだっていうのが基本的な考え方にあります。そういう考え方とか、全部ゴルフにつながるようにしてます。はい」

高校1年生から10年以上師事した和田泰朗コーチの教えが、すっかり染み込み、行動規範となっている。この日の「ノーサイド」の瞬間にも、笹原の人間性を垣間見ることができた。競技者であり、社会人でもある。今、何をすべきなのか、自然と体が反応していると感じる。

11回の落選…

プロテストに落ちたこと11回。今年も受験する。その選択にも、笹原の人間性が根底にある。

本文残り58% (1593文字/2764文字)