サッカー日本代表の2連戦は韓国戦の素晴らしいファイトに始まり、モンゴル戦の見事な勝利まで、とても熱くさせてくれる内容だったと思います。この2試合を見て、人の心を動かすのは素晴らしいプレー以上に、戦う姿や日本人であることを誇りに思わせてくれるスピリッツなんだと感じました。

今回は韓国戦とモンゴル戦の2試合を僕なりの視点で総括してみたいと思います。日本代表の何が進化して何が進化してないのか。それを私が選出した歴代日本代表ベストイレブンから考察してみたいと思います。

あくまでも僕の個人的見解なので、読者の皆さんにもそれぞれのベストイレブンを考えていただき、その上で今の日本代表を考えていただければと思います。

私の選ぶ歴代日本代表ベストイレブンは以下の通りです。

GK 川島永嗣

DF 内田篤人、冨安健洋、吉田麻也、長友佑都

MF 長谷部誠、中田英寿、香川真司、本田圭佑

FW 高原直泰、釜本邦茂

僕なりの見解を簡単に説明します。GKに関しては大舞台で日本代表のピンチを何度も救った選手であることから川島一択かなと思っています。サイドバックはチャンピオンズリーグも経験した内田、長友の2人で間違いないでしょう。

センターバック(CB)はこれだけ高さがあり、イタリアでもプレーしている吉田、冨安の2人以外にはいないと思います。MFは悩みましたが、経験と大舞台での勝負強さで言えばこの4人になるかなと思います。誰がどこのポジションになるかはそこまで気にしないでください。

そしてFWですが、これも大舞台での経験と結果で言うとこの2人になるのではないでしょうか。個人的には、結局、釜本さんをまだ超えられていないから、日本が世界でベスト8に入れないと言っても過言ではないかもしれませんね。

そして、監督はというと、やはりフィリップ・トルシエ氏ではないでしょうか。結果だけを見ても、日本代表を02年W杯16強に導いたほか、99年ワールドユース(現U-20W杯)準優勝ですからね。すごいことだと思います。

大事なのはここからです。日本代表の進化しているところと進化していないところ。最も進化しているのは長く課題だと言われていたCBのポジションではないでしょうか。大きくて強いCBが育ったことがこの2試合の無失点にもつながっていると思いますし、この2人の経験値が日本代表にもたらしている効果は絶大だと思います。

歴代でみても屈指の能力があるということ。それがこの2試合でも日本代表に安定感をもたらしていると思います。そして前回も書いたように、吉田選手のリーダーシップがものすごく浸透した2試合でもあったと思います。それは間接的に五輪世代のU-24日本代表にも伝わったのではないでしょうか。

問題はここから。これまで日本代表には優れたMFが多く存在すると言われていましたが、こうして歴代で見るとまだまだ実績も合わせて足りないように思います。長谷部、中田英、本田、香川。どの選手をみても各リーグでキャプテンをしたり、中心選手として戦っていたことがあります。このメンバーを超える存在が現在の日本代表には存在していないと思います。

ピッチ内外で日本サッカーを引っ張ってきたメンバーを超えなければ、2022年のベスト8どころか、その先に宣言している2050年の優勝は不可能に近くなります。

そして、いまだずっと課題となっているFWに関しては、ここも同様に高原と釜本さんを超えていないように思います。特に釜本さんに関しては、時代が違ってわからないと思う人もいるかもしれませんが、日本リーグでは通算251試合に出場し202得点をあげています。メキシコオリンピックではアジア人初の得点王にも輝きました。こうした実績を踏まえると、まだまだストライカーは育っていないといっても過言ではありません。

監督に関しては、トルシエ氏以降、何人もの監督が◯◯ジャパンとなってきましたが、彼を超える成績や実績を残している人は今のところいません。こうして考えると、歴代日本代表ベストイレブンは「ファンが喜ぶ」とは何かをしっかりとわかっている人たちでもあったと思います。どうやってお客さんを喜ばせるか。サッカーがうまいのは当たり前で、それを90分間見せ続けることができる選手たちです。

90分間でファンを満足させることができるかどうか。それはピッチ内だけではなくピッチ外にいるファンに対して責任を持っているということだと思います。地上波でサッカー番組がなくなり、知人に「Jリーガーといえば?」と質問をすると、答えが返ってこない時があります。この素晴らしい戦いをした2試合を無駄にしないためにも、選手、ファン、関係者があぐらをかかずに、日本サッカー発展のためにできることをしっかりと取り組みたいですね。

サッカー選手とは本当は何なのか?何度も何度も自問自答をして自分なりに答えを表現していくことが大事だと思います。それは日本サッカー協会をはじめ、サッカーというスポーツを扱うメディアも同じです。日本サッカーをどの方向に導いていくのかを徹底的に議論する必要があります。サッカーを愛するもの全てがその一端を担っているのです。

みんなでより良い日本サッカー界を再構築するために、未来を見据えて今を議論していきたいと思います。(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「年俸120円Jリーガー安彦考真のリアルアンサー」)

◆安彦考真(あびこ・たかまさ)1978年(昭53)2月1日、神奈川県生まれ。高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結ぶも開幕直前のけがもあり、帰国。03年に引退するも17年夏に39歳で再びプロ入りを志し、18年3月に練習生を経てJ2水戸と40歳でプロ契約。出場機会を得られず19年にJ3YS横浜に移籍。同年開幕戦の鳥取戦に41歳1カ月9日で途中出場し、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。20年限りで現役を引退した。同年12月には初の著書「おっさんJリーガーが年俸120円でも最高に幸福なわけ」(小学館)を出版。オンラインサロン「Team ABIKO」も開設した。175センチ、74キロ。