アメリカサッカーの急成長具合が大一番で発揮された試合だった。現状、世界最高のリーグである英プレミアリーグのスターが集まったイングランド相手に堂々と渡り合った。
中盤で目についたのは主将のMFアダムス。派手なプレースタイルではないが、日本代表で言えば遠藤航のような豊富な運動量と球際の強さで躍動。守備ではかなり効いていた。小さな体で走り回り、スペースを消して、イランを相手に6点をたたき込んだイングランドをクリーンシートに抑えた。攻撃でも局面を1人で変えるタイプではないが、シンプルにこなせて評価される選手だと思う。
リーズに所属するアダムスをはじめ、プレミアリーグでプレーする選手がスタメンに5人もいた。MLSに所属する選手は1人だけ。9年前、私がアメリカに渡った頃は、せいぜいプレミアリーガー数人と独ブンデスリーガー数人。状況は大きく変わった。正GKターナーは6年前、ニューイングランド・レボリューション時代のチームメート。当時は若い第3GKだった。試合に出ることすらほとんどなかったが、ピッチ内外で誠実で好青年だった。いまやアーセナルに移籍して国を背負ってW杯に出場まで成り上がった。素直に誇らしく思う。
結果はスコアレスドロー。「退屈」とみるか「見応えがある」とみるか。この試合に関しては、点は入らなかったものの、インテンシティが高く、見応え抜群の試合だった。
感じたのは両軍ともに「チーム」としての規律を重んじたチームだった。それぞれがバラバラに動いたりせずに自らの役割を全う。意思統一が徹底され、鉄壁の組織的守備で守り切った。一方で攻撃面では1人で局面を一気に変える“異分子”的な存在はおらず、良くも悪くもシンプルなパス、ドリブルに終始した。完成度が高いチームだけに、今後の戦いにも注目したい。(小林大悟=元プロサッカー選手、元日本代表MF)