フランスMFグリーズマンの技術の高さに驚かされた。第2節まで2連勝で早々に決勝トーナメント進出を決め、DFバラン、MFチュアメニ以外のスタメン9人を入れ替えた。しかしペースをつかめず、後半13分にチュニジアに先制点を献上。悪いムードを一気に変えたのが後半28分から途中出場したグリーズマンだった。
何より光ったのはワンタッチで前につなぐプレー。中盤にスッと顔を出してDFからのくさびのパスをダイレクトで前線に渡す。後半41分、43分でも立て続けに相手守備ラインの間で受けて、すぐにはたく。パス回しのテンポが一気に上がる。FWエムバペとのコンビネーションも、頭1つレベルが抜けていた。後半34分、2人で連続ワンツーで打開したシーンは、この試合でここまでなかったスピード感だった。
敗戦したコスタリカ戦の日本代表に欲しかった一連のプレーだった。引いた相手を崩す1つの方法としてワンタッチプレーは有効になる。毎回、同じテンポで止めて、パスして、止めて…を繰り返しても、相手の守備陣にズレを生み出せない。それでは圧倒的な高さやドリブル突破が無い限り、引いた相手を崩すのは難しい。身長173センチと小柄。体格的、フィジカル的に日本人が届かない存在ではない。
ずばぬけたサッカーIQと技術、何よりリスクを冒す姿勢に感心させられた。ワンタッチや強引なドリブルは成功すればリターンは大きいがその分、失敗する確率は上がる。それでも、グリーズマンはほぼノーミス。失敗しない自信と技術を兼ね備えているからこそのプレーだった。
試合終了間際には劇的同点ゴール…と思われたが新基準のオフサイド判定によってVARで取り消し。1位通過は変わらなかったが、チュニジアに屈した。いくら世界王者といえども、スタメンを9人も入れ替えれば簡単には勝てない。逆に言えば、短い時間で圧倒的な存在感を見せたグリーズマン、エムバペらがスタメンで出てくる決勝トーナメントが楽しみになる。(小林大悟=元プロサッカー選手、元日本代表MF)