<サッカーaiコラム:選手権のHEROたち>

 攻撃陣が注目される青森山田(青森)ですが、これまでの3試合、カギと言われていた守備で安定感を見せているディフェンス陣。前回大会も出場し、この選手権でもセンターバックの一角を担うDF中山渉吾は、1年前の悔しさをかたときも忘れることはありませんでした。

 「一生忘れられない試合」。それは前回大会、3-4で敗れた鹿児島城西との1回戦。あの一戦をきっかけに、チーム全体の守備意識がさらに向上。新チームになり、春先から試行錯誤を繰り返しながらも、ようやくここまでたどり着き、準々決勝までわずか1失点に抑えています。

 チームでは副キャプテンを務めている中山。昨年8月にキャプテンのMF椎名伸志がケガで戦線離脱したときは、彼に代わってチームをけん引。チームをまとめる大変さを知り、「自分自身100%のパフォーマンスができなければみんなはついてこないし、人に何かを言うだけじゃなく、意見を聞き入れなきゃいけない。いろいろな面で大人にならなければいけなかった」と悩んだこともありました。しかし、そんな経験が中山をサッカー選手としても、そして1人の人間としても大きく成長させてくれたのです。

 青森山田中1年のとき母親を亡くし、深く落ち込んだときも、「家族や仲間がいたからこそ、乗り越えられたし、人としても大きく成長させてもらった」と中山。そんな彼のパワーの源は、亡くなった母親の分まで愛情を注ぎ育ててくれた父親の存在。誰よりも一番に応援してくれるサポーターである父親からのメールはいつも中山を励ましてくれます。

 「とにかく前に進みたい。どんな相手であろうと、気負うことなく、思い切り楽しくやれば必ず結果はついてくる。青森山田らしさをピッチ上で全部出したいですね」

 試合を重ねるたびに精かんな顔つきになってきているのは、自信の表れ。様々な試練を乗り越えたくましく成長した中山が、準決勝の大一番に挑み、チームメートとともに、青森山田に新たな歴史を刻みます。(サッカーai編集部・石井宏美)