<サッカーaiコラム:選手権のHEROたち>
初出場で初優勝を決めた山梨学院大付。選手たちは「まさかここまで来れるとは思っていなかった」と話していましたが、選手権前の取材では「1月11日までサッカーをしたいです!」(鈴木峻太)としっかりと目標を口にしていました。DF中田寛人は「山梨県勢はここ何年も初戦敗退が続いているので、まずは1勝して勢いに乗って国立までいきたい。ディフェンスとしては失点0で優勝したい!」とまさに有言実行。
この山梨学院大付サッカー部を支え、決勝戦ではゴールもあげたキャプテンの碓井鉄平。ボランチとしてチームをけん引していましたが、キャプテンとしてピッチを離れても個性派揃いのチームをまとめました。
昨年6月の関東大会を制し、その勢いで夏の総体出場を決めたかったところが県予選準決勝で敗退。その後、チームはなかなか勝てずに苦しい時期が続きました。どうしようかと悩み出した結論は「丸刈りにするしかない!」と副キャプテンの中田と2人で丸刈りに。嫌がる3年生を何度も説得し、最後は全員が丸刈りになりました。「それで気持ちの面で、みんなに変化が表れるようになりました」(碓井)と、徐々にチームとしてのサッカーが見えてくるように。
また、ボランチでコンビを組んだ2年生の宮本龍の存在も、この大会での碓井の活躍を支えました。それまでコンビを組んでいた井上拓臣とは「どっちかというと井上が上がり目で、僕が下がり目」(碓井)と、役割が決まっていましたが、宮本とは流動的にプレーすることで、碓井が持つ攻撃力を存分に発揮。チーム得点王にも輝きました。決勝戦では青森山田の大会最高のボランチコンビと言われる椎名、柴崎の2人と対戦。決勝前日「明日は龍に任せます(笑)」と話していた碓井ですが、準決勝を前に「もし青森山田と決勝で対戦できたら、椎名や柴崎がどのくらいうまい選手なのか体感することができるので楽しみです。U-17W杯をテレビで見て、柴崎と小島(秀仁・前橋育英)のボランチはすごかったし、年下ですけど参考になることが多かった」と、心の中では誰よりも楽しみにしていました。いつも宮本と2人で居残り練習をし、磨き上げたコンビ。決勝では青森山田の2人にも決して劣らないプレーを見せていました。今年の山梨学院は3年生中心のチームでしたが「2年生にうまい選手が多いんですよ。学年の垣根なく本当に全員仲がいいチームです。2年生の力があったから、ここまで来れたと思っています」と、後輩たちへの感謝の気持ちも忘れません。
いわゆる熱血漢なキャプテンタイプの選手ではありませんが、プレーでも、それ以外の面でも「キャプテンは碓井しかいない」と監督・選手から信頼をされる碓井。自分では「どうして僕がキャプテンになったのかわからない」と話していましたが、いつも誰よりも長く練習をし、一番最後に戸締りをして、残ったゴミを拾って帰るのは碓井でした。日ごろのこういった積み重ねが、彼を選手としても大きく成長させました。
決勝戦後、胴上げの感想を聞かれ「初めての経験ですごくうれしかった。だけどすごく怖かった」と笑顔を見せた碓井。「3年生でキャプテンをやるまでは、自分のことしか考えられなかった。それがこの1年で、少しはチームのことも考えられるようになったので、成長したのかなと思います」。
大会後に発表された優秀選手にも、一緒にプレーしてみたいと話した柴崎や小島と共に選出。「高校選抜のメンバーに残ってヨーロッパでプレーしたい」と話していた碓井の目標に一歩近づきました。2月27日には初の試みとなるU-18Jリーグ選抜対日本高校サッカー選抜のフレンドリーマッチも決まりました。碓井がこのメンバーに入れば、対戦相手となるU-18Jリーグ選抜には、ジュニアユース時代に共にプレーしたFC東京の下部組織の選手も名を連ねることでしょう。元チームメイトたちを前に、碓井はどんな存在感を見せてくれるのでしょうか。(サッカーai編集部・阿部菜美子)