<高校サッカー:山梨学院大付1-0青森山田>◇決勝◇11日◇国立
初出場の山梨学院大付(山梨)が、全国3763校の頂点に立った。序盤から仕掛けの速さで青森山田(青森)を圧倒し、前半11分にMF碓井鉄平主将(3年)が今大会4ゴール目となる先制弾。後半は、攻め込まれる場面もあったが、2回戦から4試合連続完封中の堅守で、ゴールを割らせなかった。初出場初優勝は86年度の東海大一(現東海大翔洋=静岡)以来、23大会ぶり。過去、韮崎を3回の準優勝に導いた横森巧監督(67)にとっては、4度目の正直となった。
試合終了の笛と同時に、イレブンは背中からピッチに倒れ込んだ。もうこれ以上走れないというところまで、走った。もう動けない。でも、勝った。山梨学院大付が、初出場ながら頂点に立った。GK松田は立ち上がると、控えGK久保田と泣きながら抱き合った。「もう、サッカーをやめてもいいくらい。それくらい、うれしい」と、喜びを爆発させた。
チームを引っ張ったのは絶対的なチームリーダーだった。前半11分、ペナルティーエリア内やや左でMF鈴木からボールを受けたMF碓井主将は、鋭く右足を振り抜き、ゴール右隅に突き刺した。「ゴール前が混んでいたので、シュートと思った。鳥肌たちましたね」。中盤での素早いプレス、巧みなパスワークで相手を翻弄(ほんろう)。今大会2位タイの4ゴールを挙げる働きに「主将として、みんなの役に立てて良かった」と胸を張った。
初出場初優勝。だが、道のりは険しかった。昨年の関東大会を制したが、その後は調子が上がらなかった。選手はJリーグ東京のU-15出身者など県外選手が多く「みんなまとまってなくて、審判に文句を言ったり。バラバラだった」と碓井。DF中田とともに頭を丸めた。2月から赴任した吉永コーチは、碓井にバリカンを持たせ、自分の頭を刈らせた。「どうやったら、生徒と信頼関係を築けるか。最初は、生徒に大人への不信感があった。他の生徒には刈らなくていいと言ったんですが、ほぼ全員、丸刈りになってましたね」(吉永コーチ)。これを境にチームは変わった。
MF碓井、平塚のU-18(18歳以下)日本代表候補コンビを中心に、試合開始から中盤で猛プレスをかけた。鋭い出足でセカンドボールをほとんど奪った。170センチのセンターバック中田を中心とした守備陣は、青森山田MF柴崎の密着マークでなく、パスの受け手に猛然とプレッシャーをかけボールを奪った。
横森監督は「相手は前半の得点が多いから、とにかく前半勝負」と説明。碓井は「相手の出足が良くなかったから、どんどんいった」。12月上旬の「地獄の走り込み」で仕上げた豊富な運動量で、青森山田の華麗なパスワークを封じ込め、5試合連続完封で有終の美を飾った。
山梨県勢は前年度まで4年連続初戦敗退。本年度はインターハイ、全日本ユースなど全国大会出場もなかった無印軍団が、優勝旗を初めて山梨に呼び込んだ。【今井恵太】