<高校サッカー:山梨学院大付1-0青森山田>◇決勝◇11日◇国立
青森山田イレブンよ、胸を張って故郷に戻れ!
初の決勝に臨んだ青森山田は、山梨学院大付に0-1で敗れ準優勝に終わった。前半11分に先制点を許す苦しい展開。左ひざ痛のMF椎名伸志主将(3年)らを中心に、必死に攻め立てたが今大会初めて完封され、3大会ぶりの東北勢Vはならなかった。それでも、県勢の歴史を塗り替え、頂点にあと1歩に迫る快進撃に、惜しみない大声援が送られた。
ゴールをこじ開けようと攻め立てるたびに、スタンドのボルテージが上がる。後半ロスタイムには「ラッセラー」のかけ声が、国立の冬空に響き渡る。パワープレーで前線にボールを放り込むと、次々と選手が頭を出す。だが、無情にも終了のホイッスルが鳴る。死力を尽くした青森山田イレブンは、ただぼうぜんと立ち尽くした。
相手のスピード、4万3635人の大観衆が醸し出す独特のムードにのみ込まれ、浮足立った。前半11分、人数は足りているのに守備の連係が崩れ、先制点を与えてしまった。椎名は「チームとしても個人としても、準決勝とは違う雰囲気にのまれた。いつもと違うな、というのは自分たちが感じていた」と悔しがった。
「優勝して青森に帰りたかった」。キャプテンとして椎名は、チームの思いを代弁した。昨春の東北プリンスリーグ開幕後、チーム状態が悪く全員が頭を丸めて再スタートを切った。今大会4得点で快進撃を支えたFW野間涼太(3年)は、中学時代のコーチ鈴木正義さん(29)が「中2の時、体力がなさすぎて中1クラスに入れた」ほど、体が細かった。寮に千葉県の実家からプロテインを送ってもらい、体を作った。全員で標高533メートルの雲谷峠までの往復約20キロを走り込ませた後、練習試合をこなし本気で頂点を目指した。
夢実現への下地を整えたが、椎名は昨年8月に左ひざ前十字靱帯(じんたい)を断裂。選手権に間に合わせようと必死のリハビリで決勝まで進んだ。痛む患部に前日10日も痛み止めの注射を「いつもの倍打った」ほどだ。優勝こそ逃したが「正直、ここ(決勝)までこれたのは奇跡。支えてくれた方に恩返しするためにも、勝ちたかった」と、達成感と悔しさをない交ぜにした。
「雪国のハンディを乗り越えてここにきて、優勝できず少し悔しい」と椎名。涙を我慢しながら「柴崎とか試合に出た2年生を中心に、次は優勝してほしい」と、後輩に夢の続きを託した。県勢最高の準優勝を自信に「新生青森山田」が、頂点への再挑戦に踏み出す。【山崎安昭】