<高校サッカー:滝川二3-0日章学園>◇準々決勝◇5日◇ニッパ球
3回戦第1試合を戦った滝川ニイレブンは、準々決勝の相手を静岡学園と予想。しかしPK戦の末相手は日章学園に。その情報を聞いたバスの車内は「まさか」と騒然としていました。
中学時代ヴィッセル神戸ジュニアユースだったキャプテンFW浜口孝太と、G大阪ジュニアユースだった静岡学園のキャプテンDF金大貴は、今大会の組み合わせ抽選会で久々の再会を果たし、友情を深めた間柄。「中学のころから仲良かったはずなのに、兵庫と静岡で離れてしまったせいか、なぜかメールアドレスを知らなかったんですよね(笑)。抽選会のときに再会して、そこからメールするようになりました」という浜口の元に3回戦を前に金から「お互いに勝って準々決勝で対戦しよう」というメールが届きました。
しかし静岡学園は準々決勝に駒を進めることができませんでした。その日の夜、再び金から浜口の元へ「ごめん。勝てなかった。俺らの分も頑張れ!」というメールが。3回戦で腰を痛め、4日の練習ではボールを蹴るどころか走ることもできない状態でしたが、それでも「金のためにも絶対に勝ちたい」と強い決意を胸に秘めていました。
「少しでも長くこのチームでやりたいけど、どんなに勝ってもその時間はほとんど残ってない。毎試合、宿舎を出るときに弱気になっているわけじゃないけど心の中で『今日負けたら最後。悔いの残らないように楽しくサッカーをしよう』と思っています。どんどん終わりに近づいていくさみしさのようなものがありますね」。
昨年1月に手術した右足首の状態も万全ではありません。それでも「試合前は痛いけど、ピッチに立てば痛みは感じない」という浜口が走り続けることができるのは、共に戦ってきた大好きな仲間がいるから。夏のインターハイは自身のゴールで先制しながらも、市立船橋に逆転をゆるし準優勝。「先制した瞬間、まだ前半間もなかったのにもう頭の中は優勝でいっぱいだった(笑)。それが敗因です」。しかしその経験があるからこそ、「あのときを忘れるな!」とどんなときもチームメイトに声をかけ続けてきました。共に3年間を過ごした仲間とサッカーができるのもあと少し。浜口はよく「楽しんでサッカーがしたい。それが滝川ニらしい」と言います。最後のホイッスルが鳴る瞬間まで、ケガと戦いながら、キャプテンとして、そして夢半ばに敗れた友だちのためにも、サッカーを楽しむ心を忘れずに、浜口はピッチに立ち続けます。(サッカーai編集部
阿部菜美子)