<高校サッカー:久御山2-2(PK3-2)流通経大柏>◇準決勝◇8日◇国立

 大会前から優勝候補と呼ばれた3大会前の優勝校、流通経大柏(千葉)との準決勝。久御山(京都)は最後まで粘り強く「笑顔」を忘れないサッカーを貫きPK戦で勝利。初の決勝進出を果たしました。

 準々決勝の関大一(大阪)戦も1-1でPK戦に。このとき、2番目のキッカーを務め、PKを外してしまったのがMF足立拓眞(3年)。試合終了後PKを止めたGK絹傘新に駆け寄るチームメートとは対照的に、涙が止まらずその場から動くことができませんでした。その彼に「前を向け!

 笑え!」と励まし続けたのが主将の山本大地(3年)でした。

 その山本は累積警告により準決勝は出場停止。山本がキャプテンマークを託したのは足立でした。「大地の不在は精神的な影響が大きかった。でも、その分僕が声を出そうと思っていました。あいつを決勝の舞台に立たせるために、そしてメンバーに入れずスタンドで応援してくれている仲間のためにも、絶対に勝つ」とキャプテンマークに誓った足立。相手の早いプレスに苦戦しますが、全員で耐え抜き、山本を決勝の舞台へと連れて行くことができました。

 足立はこの試合のPKでも「借りを返したい」と2番目のキッカーに自ら志願。「自信はあった。楽しみました!」と笑顔で話した足立。決勝戦まで勝ち進むことができた勝因は?

 と聞かれ「明るさ」と答えました。「僕たち明るく楽しくサッカーをしているところをサッカーの神様が見てくれていたんだと思います。流通経大柏に追いつかれたときも、みんなに『笑顔でいこう!』と声をかけました」。初めての国立。今まで経験したことがないという大観衆を前にしてのプレーに「うれしい。いい経験ができているなと思います」とまったくプレッシャーはありませんでした。

 報道陣に「決勝で嬉し涙を流して終わりたい?」と問いかけられた足立は、「もう僕は2回泣いてますから(笑)涙はもういいかな」と笑った足立。一度は準々決勝でPKを外したときに、そしてもう一回は開会式の入場行進で選手全員でハメを外し1回戦を前に松本監督が激怒。チームは最悪の雰囲気に。山本主将を中心に選手だけでミーティングを開いたとき、みんなで号泣したといいます。ただ、今となっては「開会式のあと怒られたのが大きかった。あれからみんなで謙虚に行こう決めました。もしあれが無かったらどうなってたのかな…」と冷静に振り返ることができるようになりました。ほんの10日ほど前の出来事ですが、この選手権を戦う間に、彼らはものすごいスピードで成長しています。

 9日はみんなとの最後の練習になります。「決勝の前に、まずは最後の練習をめっちゃ楽しんで、いい雰囲気で終わりたい。決勝では観客を沸かせるようなプレーをして、久御山サッカーで勝ちたいです!」。足立の高校生活最後の試合は10日、聖地・国立競技場で開催されます。(サッカーai編集部

 阿部菜美子)